ヒナタカの雑食系映画論 第60回

2023年の「日本アニメ映画ベスト10」をランキング化してみた。年末年始は映画館で1位と4位を見てほしい

2023年は、日本のアニメ映画の歴史的傑作が続々と誕生した、すごい1年でした。そのベスト10を紹介しましょう。※画像出典:(C) 2023 映画「BLUE GIANT」製作委員会 (C) 2013 石塚真一/小学館

2位:『アリスとテレスのまぼろし工場』

端的に内容を言うのであれば「思春期をこじらせた少年少女による青春ダークファンタジー恋愛ミステリー」。時間が止まった街で暮らしている登場人物それぞれの危うい心や関係性がいつか「壊れる」のではないかというハラハラが展開しながらも、やがて冷酷なまでの真実へとつながっていく、独創性の強い内容となっていました。

テレビアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(フジテレビ系ほか)などの脚本家としても知られる岡田麿里監督らしい「痛々しさ」「生々しさ」がはっきり打ち出されて、かなりのフェティシズムを感じさせる表現もあり、見る人を選ぶところはあれど、描かれている感情は「閉塞感」という普遍的なもの。「今の状況を変えられないし、ほかのどこにもいけない苦しさ」に思い当たる人であれば、存分に「刺さる」内容になっていると思うのです。2024年1月15日よりNetflixで見放題配信スタートです。

【関連記事】宮崎駿、新海誠だけじゃない。作家性にあふれた「原作がないオリジナルアニメ映画」の傑作を見てほしい

1位:『窓ぎわのトットちゃん』

予告編に惹かれなかった、お化粧をしているようなキャラクターの見た目が苦手、という人もいるでしょう。黒柳徹子や原作をよく知らない、という人もいることでしょう。しかし、それらを気にして見ないというのはあまりにもったいない、この冬に映画館で見ないという選択をしてはならない、すさまじい大傑作だと断言します。

「実際もこうだよなあ」となる子どもたちのかわいらしい動きにより、約80年前の時代の彼ら彼女らが「本当に生きている」と思えるまでには、作り手のどれほどの執念があったでしょうか。そして、予告編では見えなかった「戦争が歩み寄る様」は、ほかのどんな戦争映画よりも恐ろしく、戦争がどれだけ愚かしく間違っているのかと改めて痛感したからこそ、その後に涙が滝のようにあふれる感動が待ち受けていたのです。

そのほかの注目作品は? 『君たちはどう生きるか』も

このほか、2023年に公開された、ハイクオリティの忘れ難い日本のアニメ映画には、『らくだい魔女 フウカと闇の魔女』『推しの子 Mother and Children』『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』『君たちはどう生きるか』『デジモンアドベンチャー 02 The Beginning』『劇場版 ポールプリンセス!!』『劇場版 シルバニアファミリー フレアからのおくりもの』『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』などもありました。

さらに、2023年は海外のアニメ映画も大豊作でした。中でも2022年にも小規模で公開されていた王道のスポ根映画『雄獅少年/ライオン少年』もまた、優先的に見てほしい傑作です。

そのように素晴らしいアニメ映画が大渋滞をしている中でも、もう一度お願いをしておきましょう。この年末年始に、映画館で上映中の、『屋根裏のラジャー』と『窓ぎわのトットちゃん』を見てください!

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
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