ヒナタカの雑食系映画論 第60回

2023年の「日本アニメ映画ベスト10」をランキング化してみた。年末年始は映画館で1位と4位を見てほしい

2023年は、日本のアニメ映画の歴史的傑作が続々と誕生した、すごい1年でした。そのベスト10を紹介しましょう。※画像出典:(C) 2023 映画「BLUE GIANT」製作委員会 (C) 2013 石塚真一/小学館

6位:『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

公開当初から絶賛の声が続々SNSに投稿され、4週連続で動員が右肩上がり、来場者特典はすぐに配布終了、パンフレットは売り切れ続出と、今年もっとも口コミで盛り上がった作品です。PG12指定されるほどの残酷描写があり、グロテスクな事実も提示されるものの、それは決して不快感を与えるだけのものではなく、この世に偏在し得る悪のおぞましさを描くためには必要なものだと思えました。

ファンアートや二次創作漫画がたくさんSNSに投稿されたのは、かっこいい男たちの「バディ」感に燃える(萌える)人が多かったことはもちろん、悲劇的な物語であればこそ、登場人物が幸せになる「IF」をつむぎたかったことも理由にあるのでしょう。

なお12月29日には応援上映の開催も決定し、「(鬼太郎が着ている)ちゃんちゃんこ持ち込み可」との触れ込みも話題となりました。きっと、年末年始も大盛り上がりとなるでしょう。

【関連記事】『ゴジラ-1.0』に『鬼太郎』。2023年に「戦中・戦後ものの映画」が多数公開される意義とは

5位:『プリキュアオールスターズF』

20周年を迎えたテレビアニメ『プリキュア』シリーズの最新作であり、「オールスターズ」の名にふさわしく、78人(+α)もの戦士が登場。プリキュアをまったく見たことがなくても楽しめますし、それぞれのキャラクターの性格やこれまでの物語を知っていると、さらに加点方式で感動が青天井になる、「ファン向けでありながら広く開かれた」内容となっています。

物語には意図的な「繰り返し」の構造があることにも注目。「私たちいつも○○だよね」といったセリフがキャラクターそれぞれの「らしさ」そのもので、「前にもこんなことがあったような……」という「デジャヴ」も意外な展開へとつながっていくのですから。タイトルロゴの後ろに「N」の文字があり、タイトルの「F」と合わせて「Not Final」=プリキュアシリーズがまだ終わらないことを示唆するというのも実に「粋」です。

ちなみに2023年は、同様に異なる世界のキャラクターが出会う「ユニバースもの」のアニメ映画が、『グリッドマンユニバース』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』も公開されるという、なんとも不思議な巡り合わせもありました。

【関連記事】大人こそ「プリキュアが好き」と言っていい。映画『プリキュアオールスターズF』が再定義するヒーロー像
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