ヒナタカの雑食系映画論 第60回

2023年の「日本アニメ映画ベスト10」をランキング化してみた。年末年始は映画館で1位と4位を見てほしい

2023年は、日本のアニメ映画の歴史的傑作が続々と誕生した、すごい1年でした。そのベスト10を紹介しましょう。※画像出典:(C) 2023 映画「BLUE GIANT」製作委員会 (C) 2013 石塚真一/小学館

8位:『駒田蒸留所へようこそ』

こちらは完全オリジナルのアニメ映画。崖っぷち経営の蒸留所の女性社長と、新米編集者が出会い、互いに失敗して、その後に変化が訪れる流れを丁寧に描いた王道の成長物語となっています。初めはやる気のない新米編集者にイライラが募るかもしれませんが、溜飲が下がるしっぺ返しも用意されているのでご安心(?)を。一方で、生真面目な女性社長のとある趣味には驚いたりもしましたが、それも含めて愛おしくて仕方がありませんでした。

全体的に地味とも言える作風ではありますが、だからこそ堅実な演出が生きています。温かくも甘やかすことのないドラマに、しっとりとした音楽も実にマッチしていました。さまざまな要素が落ち着くべきところに落ち着いていくような、かといって楽観的すぎない、物語の方向性が大好きです。

くしくも、2023年の秋には『北極百貨店のコンシェルジュさん』『映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』とお仕事(アニメ)映画が同時期に公開されていました。それぞれが仕事や人生に悩んだ時に、ちょっぴりだけでも気持ちも軽くしてくれるかもしれない、こちらもベスト10に入れたかった……! と心から迷った作品です。

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7位:『金の国 水の国』

2017年の「このマンガがすごい!」(オンナ編)で1位を獲得した岩本ナオによる漫画をアニメ映画化。箱入り娘のようで実はたくましいぽっちゃり体形の女性と、お調子者のようで実は聡明な長身の青年が、偽りの夫婦を演じるうちに愛が芽生えるというラブストーリーです。

物語で主軸となるのは、戦争が起こるかもしれない国家間の緊張と、明らかな資源の不均衡がある最中で、優しい人たちが「何か」を変えていく物語。コロナ禍を経て痛ましい戦争が起こる今の世の中では、その尊さをよりかみ締められるのではないでしょうか。100点満点の感涙のエンドロールまで、じっくりと見てほしいです。

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