ヒナタカの雑食系映画論 第59回

デスゲームの残酷さは、社会批評そのもの? 『バトロワ』『イカゲーム』だけじゃないデスゲーム映画6選

「デスゲームもの」の代表格といえば『バトル・ロワイアル』や『イカゲーム』。最新のデスゲームものの映画6作品を紹介するとともに、その意義を考えてみます。(サムネイル画像出典: (C) 2023 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved. )

ハンガーゲーム
『ハンガー・ゲーム 0』12月22日(金)より、TOHO シネマズ日比谷他にて全国ロードショー 配給:KADOKAWA (C) 2023 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved. 
中学生が殺し合う過激な設定のため2000年公開の映画が国会でも議題となった小説『バトル・ロワイアル』、鮮烈なビジュアルや容赦のない作劇により世界中で大ブームとなった2021年のNetflix配信のドラマ『イカゲーム』、サッカーとの異色の組み合わせとなった漫画およびアニメ『ブルーロック』など、「デスゲームもの」のエンターテインメントはセンセーショナルな話題を集めています。

表面的にはなんとも悪趣味に思えますが、作品を実際に見てみれば、残酷な内容であるからこその、相対的なメッセージが込められていると思うのです。近年公開されたデスゲームものの映画6作品を紹介するとともに、デスゲームものの意義を考えてみましょう。

1:『ハンガー・ゲーム 0』(2023年12月22日より劇場公開中)

ベストセラー小説を映画化した『ハンガー・ゲーム』(2012年)の64年前を描く前日譚です。劇中で行われるのは、12の地区から1人ずつ選ばれた少年少女が最後の1人になるまで殺し合うゲームの10回目。18歳の少年が「教育係」となり、「歌」を唯一の武器とする少女と組み、優勝を目指すことになります。
ハンガーゲーム
(C) 2023 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved. 
157分というボリュームの上映時間で描かれる全3章の構成となっており、第1章はゲームに挑む前の主人公2人の交流と、独裁国家ならではの風潮が主軸に描かれており、やはりシリーズを通じてドラマ部分に重きを置いた作品であることを再認識しました。

殺し合いゲームが展開する第2章は正直に言ってやや大味で、特に「ドローン」のとある活用方法には笑ってしまいましたが、それまでの丁寧な積み上げにより主人公2人に思い入れができていたおかげで、十分にハラハラして見ることができました。
ハンガーゲーム
(C) 2023 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved. 
物語で何より重要なのは、主人公の少年が後の1作目の『ハンガー・ゲーム』では独裁者になってしまうこと。今回の第3章で描かれる内容は秘密にしておきますが、その「確定している未来」を踏まえると、より痛切に感じられるドラマが紡がれることは申し上げておきます。そのため、1作目だけでも事前に鑑賞しておいたほうがベターでしょう。なお、脚本には『リトル・ミス・サンシャイン』(2006年)や『トイ・ストーリー3』(2010年)のマイケル・アーントが参加してしており、ドラマ部分のクオリティに大きく関わったことは間違いありません。

2:『ガンズ・アキンボ』(2021年)(NetflixやHuluやU-NEXTで見放題配信中)

「両手に銃が固定された状態でデスゲームに参加」「最強の女殺し屋に襲われる!」というシンプルな内容で、その期待に120%応えてくれる内容です。普段見ているアクション映画の50倍くらいの勢いで人がたくさん死んでいくR15+指定納得の過激さや、主演のダニエル・ラドクリフが『ハリー・ポッター』シリーズとはまったく異なる「ヘタレでクズだけど、いざという時はなかなか頑張る」キャラクターになっていることも見どころです。

劇中で両手に拳銃を強制的につけられるという状況は、「加害性の無自覚」についての痛烈な批評とも読み取れます。何しろ主人公はSNSでいわゆる「クソリプ」をしたことがきっかけでデスゲームに送り込まれており、「クソリプという言葉による暴力は、銃のように人を傷つける」という罪の重さを示しているとも取れるのです。とはいえ、その批評性は刺身のつまのようなもの。基本的にはいい意味で過剰にさえ思えるバイオレンスアクションを楽しむ内容でしょう。

3:『レディ・オア・ノット』(日本公開なし)(各配信サービスでレンタル中)

「命懸けの鬼ごっこに強制参加」と、これまたシンプルなデスゲームもので、当然のようにR15+指定納得の残酷描写も売りの内容です。大富豪一族に嫁いだはいいけれど、「伝統儀式」と称するのがデスゲームものというのは、女性に決定権のない結婚や、はたまた家父長制を起因とする悪しき伝統への批判とも取れるかもしれません。

初めは異常事態に翻弄(ほんろう)されるだけだった主人公が、次第に「窮鼠猫を噛む」状態になっていくことが楽しいですし、バラエティ豊かな攻防性にハラハラするでしょう。「なんてひどい(褒め言葉)ことを思いつくんだ」と思うばかりのラストは一周回ってすがすがしいものがあります。ちなみに、主人公を演じたサマラ・ウィービングは前述した『ガンズ・アキンボ』では女殺し屋役で、そのあまりのキャラクターの違いにも驚かされます。
次ページ
デスゲームものにある「社会批評性」とは
Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

連載バックナンバー

Pick up

注目の連載

  • ヒナタカの雑食系映画論

    「倍速視聴とスキップ」「ながら見」をしてしまう理由は? 新卒社員の本音に、映画オタクが“ガチ回答”

  • 恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」

    羽田空港行きの1番列車が発車! 外観も車内も“台湾づくし”の京急「ビビビビ!台湾号」運行開始

  • 世界を知れば日本が見える

    「iPhoneに盗聴されている気がする」会話内容が広告表示されるのは“錯覚”か。デジタル広告の正体とは

  • どうする学校?どうなの保護者?

    「健診で服脱がされ…」保護者の投稿に、「タダ働き同然なのに」と医師ら反発 背景にPTAにもある理不尽