4:『劇場版 ソードアート・オンライン プログレッシブ 星なき夜のアリア』(2021年)(各配信サービスでレンタル中)
テレビアニメも人気を博したライトノベルを、ヒロインの視点からリブート(仕切り直し)してアニメ映画化。そのため、予備知識がなくても楽しめます。内容は「ゲームの世界に閉じこめられ、その中で死ぬと現実の世界でも死んでしまう状況の中、クリアを目指す」というもので、現実にもある、多人数が同時参加する「MMORPG」かつ、仮想空間の中で戦う「VR」のゲームで、デスゲームが展開するというわけです。ただゲームを攻略する、死なないことを目指すだけではなく、「誰かのため」の行動が描かれていることも見どころです。人間が利他的な行動をするのはなぜかという根源的な問いを、デスゲームという理不尽な状況だからこそ投げかけているとも言えるでしょう。なお、2022年には続編の『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥(くら)き夕闇のスケルツォ』も公開されており、こちらでもまだ物語は途中で終わっている状態であるため、さらなる続編も待ち望まれます。
5:『ザ・ハント』(2020年)(U-NEXTで見放題配信中)
森の中で目を覚ました12人の男女が、何者かに命を狙われていることを知り必死で逃げ惑う、デスゲームものの王道と言える始まり方なのですが……その直後、文字通りに開いた口が塞がらなくなる、予想外すぎる展開が訪れます。さらに「デスゲームの中にとんでもないやつがいたおかげで主催者側がむしろヤバい立場になる」という、デスゲームものというジャンルそのものを皮肉った内容とも言えるでしょう。こちらもR15+指定大納得の残酷描写に満ち満ちた悪趣味上等な内容のようでいて、アメリカ社会の分断への痛烈な風刺も込められています。疑心暗鬼に駆られるだけなく、深い思慮のないまま短絡的かつ暴力的な行動に出て、しっぺ返しを受ける人物の姿はブラックコメディー的でもありますが、現実の世界にももちろんあるものでしょう。そして、上映時間90分でテンポ良く駆け抜けた先に待ち受ける、「キレ味抜群のラスト」はもう最高というほかありません。
6:『エスケープ・ルーム』(2020年)(U-NEXTで見放題配信中)
実際にある体験型エンターテインメントとして人気の「脱出ゲーム」を題材に描いた作品ながら、もちろんデスゲームものなので命懸け。6人の男女が部屋に閉じ込められ、次々と襲いかかる仕掛けに、知力と体力の両方を駆使して攻略する様は、デスゲームものの映画のパイオニア『CUBE』(1997年)を思わせます。ショッキングな展開はあれど、直接的な残酷描写は控えめでG(全年齢)指定であるため、比較的見る人を選ばない内容と言えるでしょう。「これで賞金1万ドルは安すぎだろ!」などツッコミたい部分もありますし、なかなか勢い任せな展開もあるものの、最初から最後まで見せ場が詰まった娯楽作として優秀な出来栄えです。なお、続編となる『エスケープ・ルーム2:決勝戦』はAmazonプライムビデオなどで見放題配信中です。
デスゲームものにある社会批評性
『バトル・ロワイアル』では中学3年生という多感な年頃の生徒たちのさまざまな思いが交錯しており、殺し合いゲームは「勝手に未来を決める大人のルール」に巻き込まれる、現実の子どもたちの苦しみを反映しているとも取れます。はたまた、『イカゲーム』では韓国の格差社会の現状を、はっきりと各キャラクターに投影させていました。「子どもの遊びで負けたら死ぬ」という理不尽さが、ほかのデスゲームものよりも強く表れており、それがより登場人物それぞれの深刻な状況を浮き彫りにもしていました。デスゲームものの多くには、やはり一定の社会批評性が確実に込められているのです。
そして、デスゲームものの最新作『ハンガー・ゲーム 0』で強調されているのは、ストレートに独裁国家の理不尽さ。極端なディストピアの世界観でありながら(だからこそ)、現実の世界にも似たような国やコミュニティは、確実に存在しているとも思わせるのです。
そして、デスゲームものは残酷な内容であればこそ、人の死を強く意識させるため、相対的にその命の尊さを、もっと言えば「生きる意味」を考えさせてくれるジャンルではないか、とも思えます。
そして、不謹慎でインモラルなことを描いた物語からは、往々にして「そうならない」ための教訓や、現実でよりよく生きるためのヒントを得る、という意義もあります。学校で教える道徳的な物語の対極にあるデスゲームものから、そのことを鑑みてもいいでしょう。
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。