ヒナタカの雑食系映画論 第56回

『屋根裏のラジャー』が「ジブリの先」に到達した理由。ポノックによる「新しいアニメ表現」への意欲作

2023年12月15日より劇場公開となる『屋根裏のラジャー』が、スタジオジブリの血を引きつつも、新しい時代のアニメ映画になった理由を解説します。※画像出典:(C) 2023 Ponoc

屋根裏のラジャー
『屋根裏のラジャー』 2023年12月15日(金)全国東宝系にて公開 (C) 2023 Ponoc
アニメ映画『屋根裏のラジャー』が2023年12月15日より劇場公開されます。

結論から申し上げれば、ものすごく面白かった! アニメーションの豊かな表現それぞれに大きな感動がありますし、 寺田心や鈴木梨央や安藤サクラら豪華なボイスキャストの演技も素晴らしく、子どもが活躍する正統派な「ジュブナイルもの」として老若男女におすすめできます。

ジブリ好きだけじゃない、「新しい時代のアニメ映画」を見たい人にも刺さる

そして、何よりも重要なトピックは、スタジオジブリの「後継」といえるアニメ制作会社・スタジオポノックの長編第2作であること。ジブリが好きな人にもおすすめできるのはもちろん、「新しい時代のアニメ映画」を見たい人にも大推薦できるのです。ポノックの来歴を簡単に振り返りつつ、『屋根裏のラジャー』のネタバレに触れすぎない範囲で、その理由を記していきましょう。
 

2023年はジブリとポノックの最新作が公開される年に

スタジオポノックは、スタジオジブリの制作部の解散に伴って退社したプロデューサーの西村義明が、「ジブリの血を引いた作品を作る」ことを決意して2015年に設立しました。そして、米林宏昌監督によるポノックの長編第1作『メアリと魔女の花』が2017年に公開されたのです。
 
しかし、その2017年に宮崎駿監督は引退を撤回して新たな長編映画の制作を発表。2023年7月にはジブリ最新作『君たちはどう生きるか』が公開されました。
 
さらに、『屋根裏のラジャー』は当初2022年夏の公開を予定していましたが、働き方改革による作業時間の減少、フランスの新たなデジタル技術の導入、さらにコロナ禍も重なり、何より​​作品のクオリティを追求したことなどから制作が遅れ、約1年半の公開延期となりました。
屋根裏のラジャー
(C) 2023 Ponoc
そのため、一時は制作部が解散したジブリの最新作と、その後継でもあるポノックの最新作の両方が2023年に公開されるめぐり合わせとなったのです。
次ページ
『メアリと魔女の花』は賛否両論だった?
Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

連載バックナンバー

Pick up

注目の連載

  • ヒナタカの雑食系映画論

    『塔の上のラプンツェル』悪役のゴーテルに「愛」はあったのか。5つのポイントから考察

  • 「正直、日本ってさ…」外国人に聞くぶっちゃけニッポン

    中国人は「天津飯」を知らない? 在住歴14年目の中国人女性が、日本の中華料理は「味が濃い」と語るワケ

  • アラサーが考える恋愛とお金

    専業主婦の母は「金銭的理由」で離婚できなかった。共働きによって離婚はカジュアルになったのか

  • 恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」

    「スヌーピー」のラッピング電車、デビュー! 車内は中吊りも壁面も『PEANUTS』キャラだらけ