ヒナタカの雑食系映画論 第1回

【2021年アニメ映画ベスト5】映画ライターが“豊作の1年”から傑作を厳選!

2021年はアニメ映画が豊作でした。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』や『劇場版 呪術廻戦 0』だけではありません。心の底から観てほしいと願うばかりの、2021年に劇場公開されたアニメ映画のベスト5を紹介します。 ※画像出典:(C)吉浦康裕・BNArts/アイ歌製作委員会

2021年、上半期は新型コロナウイルスの感染拡大および緊急事態宣言のため、首都圏の映画館では休業や時間短縮を余儀なくされ、作品自体の公開延期も相次ぎました。10月頃からはおおむね通常通りの営業には戻ったものの、映画館で映画を観ることをためらった人も多かったのではないでしょうか。

もちろんその間にも素晴らしい映画がたくさん公開されており、特にアニメ映画は豊作でした。興行面では『シン・エヴァンゲリオン劇場版』『名探偵コナン 緋色の弾丸』『竜とそばかすの姫』『劇場版 呪術廻戦 0』などが目立ちますが、他にも優れた作品があったことをご存じでしょうか。ここでは、筆者の独断と偏見による、2021年アニメ映画ベスト5を紹介しましょう。
 

5位:『映画大好きポンポさん』


同名のコミックを原作とした作品で、敏腕プロデューサーのポンポさんと、期せずして映画監督に抜てきされた青年、新人の女優が映画作りにまい進していく物語がつづられています。かわいいキャラクターが生き生きと動くアニメのクオリティがものすごく高く、映画作りそのものへの楽しさや葛藤も大いに伝わるでしょう。映画ファンに限らず、人生の選択に迷う全ての人へのエールにもなっていることも素敵です。
 

4位:『カラミティ』


フランス・デンマーク合作の作品です。実在の女ガンマンであるカラミティ・ジェーンの幼少期を描いており、序盤は旅の一団が「男らしさ」「女らしさ」にとらわれているさまがつづられていて、やがて主人公のジェーンはとある事件をきっかけにたった1人で冒険に飛び出し、性別に左右されない「自分らしさ」を獲得していきます。絵画のように美しい風景にも心を奪われることでしょう。
 

3位:『さよなら、ティラノ』


人気絵本「ティラノサウルスシリーズ」のアニメ映画作品で、無骨なおじさんのティラノサウルスと、天真らんまんな女の子のプテラノドンが、食料がなくなりつつある厳しい世界で「天国」を目指すロードムービーです。単純明快に楽しめる冒険活劇でありながら、キャラクターの知られざる過去も物語に奥深さを与えています。声優は三木眞一郎、石原夏織、悠木碧、さらに2018年に亡くなった石塚運昇などとても豪華。坂本龍一が『王立宇宙軍 オネアミスの翼』以来33年ぶりに手がける流麗な音楽も必聴です。
 

2位:『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』


劇場版シリーズ初の「本格(風)学園ミステリー」と銘打たれた作品です。謎解き要素が面白いだけでなく、超エリート校の「やりすぎた成果主義とランク付け」による分断と差別も描かれており、それがあってこそ「友情」「青春」「多様性」などを絡めたメッセージが際立つという、脚本の完成度が半端なものではありませんでした。しんのすけと風間くんの関係性もとても尊く、映画オリジナルのキャラクターがみんな大好きになれるでしょう。子どもの教育上も素晴らしく、そして大人が感涙できるエンターテインメントとしても理想的でした。
 

1位:『アイの歌声を聴かせて』


試験中のAIロボットが転校生としてやってきて、ひとりぼっちの少女へ唐突に「今、幸せ?」と聞くことから始まる物語です。このAIがなぜか歌いながら踊り出す場面があるのですが、そのミュージカルの「突然歌い出すのって変だよね」という違和感も逆手に取り、とある「秘密」に結びつく、物語上も重要なものになっていくのが巧みでした。主演の土屋太鳳の声の演技と歌唱力も素晴らしく、中盤の斬新な「ジャズ柔道ミュージカル」のアイデアを実現するアニメのクオリティも最高峰。AIもののSF、ミュージカル、青春物語、それぞれの要素が見事に融合した、アニメ映画の歴史を塗り替える大傑作と断言します。


その他にも、『JUNK HEAD』『漁港の肉子ちゃん』『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』『トゥルーノース』『シドニアの騎士 あいつむぐほし』『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』『サイダーのように言葉が湧き上がる』『岬のマヨイガ』『映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』『フラ・フラダンス』などもアニメ映画ファンの間で評判となりました。

誰もが知るコンテンツの劇場アニメ版ももちろん良いですが、『アイの歌声を聴かせて』のようにオリジナル企画の素晴らしいアニメ映画があることも、ぜひ知って、観てほしいです。

(C)吉浦康裕・BNArts/アイ歌製作委員会


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