PTAの保護者たちを取材していると、最近よくこんな悩みを耳にします。
「こども110番」は、子どもが危険を感じた際に助けを求めて駆け込める、私設の避難場所のようなもの。1990~2000年代に全国的に広まった活動で、個人のお宅や店舗前に貼られた「こども110番」のステッカーやプレートが目印です。掲示物は多くの場合、警察や教育委員会など行政が作っています。
しかし今、子どもが不審者から身を守るために利用することはごくまれです。利用実績は非常に少なく、学校が「こども110番」の家に駆け込むよう指導することもほぼなくなっています。
そんななか、「こども110番」の登録世帯に継続をお願いしたり、新規で引き受けてくれる家を探したりする「お仕事」は今もPTAで引き継がれており、保護者の負担となっているのが実情です。そのため昨今は、事業を終了したり、別のやり方を模索したりするPTAが増えてきました。
今回は、そんな「こども110番」の見直しに取り組んだPTAの事例を2つご紹介しましょう。
「もし登録家庭に不審者がいたら?」という保護者の疑問
「こども110番は、個人宅をやめて、コンビニなどの商業施設のみにしました」こう話すのは、千葉県柏市立大津ヶ丘第二小学校PTA会長、山口晃一郎さんです。見直しのきっかけは、保護者からの質問だったといいます。
「『こども110番の家は、どんな基準で選んでいるのか? もし不審者がいる家に、そのステッカーが貼ってあったらどうするのか?』と聞かれて、僕はそれに答えられませんでした。あとで調べてみたら、審査と呼べるようなものはないことが分かり、確かに『これはおかしいな』と思って。
利用実績を確認したら、過去5~6年の間に市内で2件しかなく、どちらとも『トイレを貸してほしい』というものでした。そのために、毎年PTAの保護者たちが多大な時間と労力をかけて継続確認をするというのは、ちょっと違うんじゃないかな、と思ったのが見直しのきっかけです」
しかも、近年は日中に人がいない世帯が多く、「こども110番」の機能を果たせる家は減っています。他方では、ドライブレコーダーや防犯カメラの設置が増えていることも考え併せて、同PTAでは個人宅の「こども110番」を2023年度で終わりにしたということです。
過去20年間、個人宅への駆け込み事例はなかった
「こどもの家(こども110番)」の事業を終了して、代わりに登録不要で掲示できる「見守りプレート」を作成・導入した例もあります。東京都調布市立北ノ台小学校PTAです。
同PTAも、かつては大勢の保護者(校外委員)が手分けして、「こどもの家」に登録している約190世帯に対し、毎年電話や訪問による継続確認を行っていました。当時のPTA役員は、こう話します。
「登録世帯の方が不審者から被害に遭ったときなどに見舞い金が出る保険があるので、毎年継続の確認が必要だと聞きました。ところが教育委員会に問い合わせたら、事業開始から約20年間、個人のお宅での駆け込み事案はなかったことが分かったんです。だったらPTAで保護者たちがこれほど労力をかけるのはおかしいと思い、やめることを検討し始めました」(同PTA元副会長・小沢友紀子さん)
小沢さんらPTA役員は、全ての登録世帯に周知のうえ、こどもの家に関する「説明・意見交換会」を実施しました。すると参加した数家庭のなかから「駆け込める家がなくても、プレートそのものに犯罪抑止力があるのでは」という指摘があり、これに納得して、新たな見守りプレートを作りたいと考えたそう。
実際に同PTAが作成したプレートがこちらです。目が大きいためでしょうか、見守っている雰囲気が強く感じられます。



