恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」 第124回

南海電鉄の新・観光列車「GRAN 天空」は“高野線の救世主”となれるか。100年ぶりサービス復活の勝算

2026年4月24日、関西の大手私鉄・南海電鉄の新しい観光列車「GRAN 天空」が華々しくデビューした。この列車は大阪ミナミのターミナル駅・なんばから高野山の麓の駅・極楽橋駅を1時間半ほどで結ぶ新しい趣向の車両だ。その誕生の背景を探ってみた。

2026年4月24日、関西の大手私鉄・南海電鉄の新しい観光列車「GRAN(グラン)天空」が華々しくデビューした。この列車は大阪ミナミのターミナル駅・なんばから高野山の麓の駅・極楽橋駅を1時間半ほどで結ぶ新しい趣向の車両だ。
GRAN天空
なんば駅の専用ホームで発車を待つ「GRAN 天空」

うなぎのぼりの観光客。高野山が直面する「オーバーツーリズム問題」

高野山といえば、2004年に「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録され、国内のみならず、世界に広く知られるようになった。元から頻繁に高野山を訪れる参拝客だけではなく、インバウンド、とりわけフランス人には絶大の人気を誇る。

「天空の宗教都市」として、信仰の対象であるとともに、観光、自然、食など多彩な魅力を発する目的地となっている。それゆえ、訪問客はうなぎのぼりに増加し、近年はオーバーツーリズムが問題化しつつある。
高野山駅
電車で高野山へ向かうと極楽橋駅からケーブルカーに乗り換え、高野山駅に到着する
地元である高野町(和歌山県)の資料によると、高野山来訪者の交通手段は、平日やゴールデンウイークといった観光のトップシーズンによって差異があるものの、自動車での来訪が58%から74%にも及ぶという。道路や駐車場の整備が進み、気軽に行きやすくなったためであろう。

次に観光バスでの来訪が多く、鉄道など公共交通の利用は8%~17%にとどまる。すでに行楽シーズンにおける道路の大渋滞、駐車場不足、必ずしも広くはない道路での歩行者の安全問題、排出ガスによる汚染、さらには地元の受け入れ態勢への懸念など事態は深刻の度を深めている。

よって、少しでも訪問客の公共交通への利用を促す施策が望まれる。

知る人ぞ知る存在から脱却。「GRAN 天空」がなんば駅に乗り入れる意義

天空
2009年から2026年3月まで走っていた「天空」
もちろん、南海電鉄が何もしてこなかったわけではない。

2009年7月から2026年3月まで観光列車「天空」を高野線の橋本~極楽橋駅間で、平日は1日2往復(運休日あり)、土・休日は1日3往復運行してきた。

累計で44万人の利用者があり、窓を向いた「ワンビュー座席」、森林の外気を取り入れる「展望デッキスペース」などが好評で人気列車だった。

とはいえ、大阪市内のターミナル駅に乗り入れてはいなかったので、知る人ぞ知る列車であり、さらなる魅力ある観光列車が望まれるところだった。
なんば駅0番ホーム
「GRAN 天空」専用のなんば駅0番ホーム。木のベンチが特徴だ
今回、新しい観光列車「GRAN 天空」は南海電鉄のターミナル・なんば駅に発着することで、全国のみならず海外からの観光客にもアピールできることとなった。

といっても1日2往復程度では、偶然車両に遭遇するチャンスは多くない。そこで、専用のホームを設置し(従来の1番線降車専用のりばを大改装)、「GRAN 天空」を大々的にPRすることとなった。

なんば駅には、関西空港から特急「ラピート」で到着するインバウンド客も多いので、絶好の宣伝効果となるであろう。
次ページ
1万円超えの座席も!? 新列車の豪華な車内と料金
Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

連載バックナンバー

Pick up

注目の連載

  • 恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」

    南海電鉄の新・観光列車「GRAN 天空」は“高野線の救世主”となれるか。100年ぶりサービス復活の勝算

  • ヒナタカの雑食系映画論

    フランス製アニメ映画『ARCO/アルコ』の「逆ラピュタ」な魅力。注目してほしい「持続可能」な世界とは

  • どうする学校?どうなの保護者?

    会費0円、会員3名でもPTAは回る。理想を形にした「架空の小学校」という驚きの手法

  • 海外から眺めてみたら! 不思議大国ジャパン

    「移民」に冷たいのはどっちなのか? スイスの厳格過ぎる学歴選別と、日本の曖昧過ぎる外国人政策