世界を知れば日本が見える 第14回

なぜアメリカは「TikTok」を警戒するのか、他のSNSとの違いは

世界で10億以上のユーザーが利用する中国系の動画投稿アプリ「TikTok」だが、アメリカのバイデン大統領が政府などでの禁止措置に動くなど、議論は続いている。日本でも人気の高いTikTokだが、実際のところどれほどリスクがあるのだろうか。

日本や世界はどうか

とにかく、両サイドによる賛否の議論がまだ続いている状態だ。アメリカ以外では、インドやインドネシアがTikTokを規制しており、オーストラリアなどでも使用規制を求める声が上がっている。日本は現時点で使用を禁じるような動きは見えない。ただその間にも、ユーザー数は増加していく。
 

バイトダンス側は一方的にアプリを禁じようとするアメリカ政府のやり方を強く否定し、アメリカ当局にも協力しているとも言う。
 

もっとも、中国政府は同じような理由で、アメリカ製の世界的なITサービスの多くを国内で使用禁止にしている。TwitterやFacebook、Amazonは中国では使用が禁止されているし、Googleも中国政府の圧力(とサイバー攻撃など)によって、本土から撤収している。
 

米軍傘下の技術開発機関の職員は以前、筆者との会話の中で「中国の米企業に対する一方的な規制は、アメリカにとっては不平等であり、アメリカ側の中国企業に対する規制強化にとやかく言われる筋合いはない」と言っていたが、そういう意見が出ても仕方がないだろう。
 

この議論はまだ続くと見られている。動向を注目しておきたい。


山田 敏弘プロフィール
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、アメリカ・マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。

国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。

Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル


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