バイトダンス側の言い分は
バイトダンス側は以前から、アメリカのユーザーデータは中国以外に設置されたサーバに送られるので中国側はデータにアクセスできないと主張している。だが2022年6月には、バイトダンス社内で2021~2022年に行われた会議の大量の音声データをメディアが入手し、その会議の内容から、中国国内にいるスタッフがアメリカなど国外のユーザーデータに難なくアクセスできていることが明らかにされている。
さらにアプリで使用できるキーワードやコンテンツも検閲しており、「天安門」というような中国政府に都合の悪い言葉は利用不可にされているとの報告もある。加えて、中国政府に脅威と見られるユーザーのアカウントが凍結されるケースもあるという。「おすすめ」動画などには中国当局が都合が悪いと見なす内容のものは表示されない、と。
ここ数年、こうした情報は、枚挙にいとまがないほど噴出しているのが実態だ。12月3日には、FBI(米連邦捜査局)のクリストファー・レイ長官が、価値観の違う中国政府がコントロールしたりデータを入手したりするのは心配であると語るなど、TikTokをけん制するメッセージも頻繁に目にするようになっている。
だが、TikTokを排除するアメリカに反発する意見も存在する。
TikTok以外のSNSもリスクは同じ?
2023年1月8日、米名門校のジョージア工科大学の研究グループが「TikTokとアメリカ安全保障」と題したレポートを公開した。このレポートは、TikTokが中国政府の「トロイの木馬」として、ユーザーに悪影響を与えたり、スパイ工作を行ったりしていると指摘されていることについて、「(中国による)アプリの所有権とコントロールによって、国家全体の安全保障を脅かすことになるのかを説明できていない」と主張している。
TikTokを検証したこのレポートによれば、TikTokが中国の検閲行為をアメリカなどに「輸出」するようなことは確認できないとする。また、同アプリが収集するデータは、政府や軍など安全保障にかかわる仕事をしている人たちには影響があるかもしれないが、それはTikTok以外のソーシャルネットワークアプリもデータにアクセスされるリスクは同じであると主張している。
加えて、TikTokは中国政府のスパイ「ツール」ではないし、アプリを禁じることはすでにTikTokをビジネスにしている人たちの活動を妨害し、アメリカ企業にとってもビジネスチャンスを失うリスクがあるともまとめている。
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