世界を知れば日本が見える 第15回

強盗犯「ルフィ」も使用した通信アプリ「テレグラム」 実は強固な暗号化ではなかった?

「ルフィ」と名乗る強盗犯が使用したとされる「Telegram(テレグラム)」。無料の暗号通信アプリだが、実は、デフォルト設定のままでは強固な暗号化になっていない。強盗犯はどのようにして使用していたのだろうか。

「ルフィ」と名乗る強盗犯が使用したとされる「Telegram(テレグラム)」(画像はイメージ)

日本各地で続発している強盗事件で、フィリピンから強盗を指示していたとされる「ルフィ」を名乗る人物が話題になっている。
 

警察当局によれば、「ルフィ」という名前はどうも複数の人物が使っているようで、フィリピンの刑務所から、日本にいる強盗や特殊詐欺の実行役に指示を出していたという。
 

地下サイトを取材してみると……

日本で指示を受けていた実行役らは、高額報酬を約束する「闇バイト」に応募していた。そこで筆者が地下サイトを取材してみると、確かにいくつも闇バイト募集が確認できた。1つ例を挙げると、「単発●万の仕事です。気になったら連絡ください」というメッセージと共に、「闇バイト 単発バイト グレーバイト お金欲しい 単発仕事 単発バイト グレー仕事 闇仕事」という言葉が並んでいた。
 

とにかく、「ルフィ」が闇バイトで実行役を募り、強盗を指示していたという事件なのだが、この犯人らがやりとりをする方法が、無料の暗号通信アプリだったことが分かっている。そのアプリとは、暗号化できて安全に使えると報じられている「Telegram(テレグラム)」である。
 

Twitterでも「闇バイト テレグラム」で検索すると多くの投稿が出てくる

 

テレグラムとはどういうアプリなのか

ニュースでも話題になっているので、このアプリの存在を知っている人は多いかもしれない。ただ、テレグラムがどういうアプリなのかを知る人は少ないかもしれないので、あらためてこのアプリについて取り上げてみたい。
 

テレグラムは、ロシア人の起業家パベル・ドゥロフ氏が立ち上げたアプリである。もともと、現在38歳のドゥロフ氏は、ロシアのサンクトペテルブルクの大学を卒業後に、兄と一緒に、facebook(フェイスブック)のロシア版といわれる「VKontakte(フコンタクテ)」というSNSをロシアで立ち上げた。
 

しかしその人気が高まるにつれ、ロシア当局から、ユーザーデータを差し出すよう要求されることになった。特にウクライナ人活動家のデータの提供を求められた際に、ついに、そうした圧力に辟易したドゥロフ氏は、フコンタクテを捨てて、国外に逃亡し、新たに国外でテレグラムを立ち上げた。
 

ドゥロフ氏は現在、ドバイに暮らしており、テレグラムも本部をドバイに置いている。


>次ページ:テレグラムでやりとりされた内容は本当に全て暗号化されている?

 

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