世界を知れば日本が見える 第14回

なぜアメリカは「TikTok」を警戒するのか、他のSNSとの違いは

世界で10億以上のユーザーが利用する中国系の動画投稿アプリ「TikTok」だが、アメリカのバイデン大統領が政府などでの禁止措置に動くなど、議論は続いている。日本でも人気の高いTikTokだが、実際のところどれほどリスクがあるのだろうか。

バイデン大統領もTikTokの利用規制に署名

ジョー・バイデン米大統領は2022年12月29日、政府の電子デバイスでTikTokを使うことを禁じる超党派の法律に署名した。同アプリが国家安全保障にリスクだと判断したからだ。政府関連機関での規制がさらに強化されたことになる。ちなみに米軍でもすでに同様の規制がある。
 

さらに今、アメリカ国内では半数以上の州で、州政府が政府機関でのTikTokの使用を禁止している。リベラルな州として知られているカリフォルニアやニューヨークなども禁止にしており、決して反中国の保守勢力が推し進めているわけではないことが分かる。それに伴って、各地の大学などもTikTokを排除する動きが進んでいる。

TikTok排除の動きが進むアメリカ(画像はイメージ)

さらにアメリカでは、6月28日に米国連邦通信委員会(FCC)のブレンダン・カー委員が、アプリストアから動画共有アプリTikTokの削除を求める書簡を、アップルとクーグルに送付している。理由は、ユーザーのデータが中国政府に渡っている恐れがあるからだった。
 

そもそも、同国によるTikTok排除の動きは、2020年のドナルド・トランプ大統領の政権時に始まった。中国資本のIT大手企業をアメリカ(と同盟国)の市場などから排除しようとする米中の経済摩擦の一部として、トランプ政権はTikTokの危険性を吹聴して、アメリカ国内での利用を制限しようとした。
 

そしてアメリカ政府は、TikTokの同国での事業をアメリカ国内企業に引き継ぐことを条件にTikTokの全面禁止はしないとの方針を示し、当時いくつかのアメリカ企業が運営に名乗りを上げた。だが交渉が難航する中で、政権が交代し、バイデン政権が発足したため、この動きはペンディングになっていた。しかし、バイデン政権は2022年末、先に述べたように政府などでの禁止措置に動いた。


>次ページ:アメリカはTikTokの何を警戒しているのか

 

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