松村北斗の「しごでき」エリートとのギャップも魅力的だった
そして、和真役の松村北斗役が適役という言葉でも足りないほどのハマりっぷりでした。原作小説から和真は「鼻筋の通った、整った顔立ち」とはっきり記されており、その通りのルックスを持つ松村北斗はもう「大正解」なのですが、個人的には「デキる男」なのに「迂闊さ」があることも、とても愛おしく映ったのです。
一方で、雑誌記者から父が殺人容疑で逮捕されたことを追及された時に、彼は「そういう言い方をしちゃだめだよ!」な対応をしてしまうのですが、「こんな感じの人だったら言っちゃいそうだな」とも思える説得力も備えていました。
松村北斗は『夜明けのすべて』では無気力で不遜ながらもパニック障害の悩みを抱えた青年、『ファーストキス 1ST KISS』ではやや「陰キャ」寄りの理系男子、実写版『秒速5センチメートル』ではどこか冷めていながらも実は過去に囚われている会社員など、おおむねで「平気なふりをしているけど繊細さも見えてくる」役柄を好演していました。 今回の『白鳥とコウモリ』の松村北斗は初めこそ「しごできエリート」だったものの、「父が殺人犯として逮捕されたために仕事と生活にも大いに影響が出て憔悴していく」という「陽と隠のギャップ」が際立つ役を体現していたのです。
白眉となる、映画オリジナルの今田美桜との会話シーン
さらに、もう1人の主人公である美令を演じた今田美桜も、原作小説で「顔の造作は派手」と失礼な分析をされるほどのルックスに一致していますし、「話すうちに気持ちが昂る」ほどに“感情を抑えられない役”にピッタリです。
そして、原作にはない、映画オリジナルの喫茶店で和真と美令が父親について語るシーンは、本作の白眉ではないでしょうか。
美令の「父親と最後にした会話で、自分が何と答えたのか思い出せない」という告白に対しての和真の返答と、その時の切なく、複雑でもある松村北斗の表情が忘れられません。この2人のW主演で良かった、と心から思えました。
30年以上前の事件も絡む、「父の真意が分からない」心理
さらに物語で重要なのは、三浦友和演じる倉木達郎が「"すべての事件"の犯人は私です」と言っていることです。というのも、彼は30年以上も前に金融業者を殺したのも自分だと告白しており、そちらは時効を迎えているのですが……詳細は伏せておきますが、その事件もまた深淵で複雑な「業と罪」の物語へと転換していくのです。
ただ、筆者個人としては、手紙の内容を映画でそのまま語るとやや冗長になってしまうでしょうし、和真の「父の真意がわからない」心理がより強調されているので、英断だったと肯定したいです。



