ヒナタカの雑食系映画論 第239回

安田章大だからこそ生まれた映画『平行と垂直』。自閉スペクトラム症を「天才にしない」意義とは

映画『平行と垂直』は天才的な特殊能力を持たない、でも自分の特性を活かして生活をしている自閉スペクトラム症の人物を描く意義を強く感じる作品でした、主演の安田章大が“企画”から参加した理由を含めて解説しましょう。(画像出典:(C)2026「平行と垂直」製作委員会)

平行と垂直
タイトル:『平行と垂直』8月28日(金)全国公開 配給:東映ビデオ (C)2026「平行と垂直」製作委員会
8月28日より映画『平行と垂直』が劇場公開中です。本作はSUPER EIGHTの安田章大と、のんが兄妹(きょうだい)を演じるダブル主演作。そして、安田章大が自閉スペクトラム症(以下、ASD)の男性を演じていることのみならず、安田章大が“企画”にクレジットされていることに、ぜひ注目してほしいのです。
平行と垂直 (幻冬舎文庫 や 50-1)
平行と垂直 (幻冬舎文庫 や 50-1)

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「通勤と仕事の仕方」からも分かる、ASDの特性

ASDとは、「主に社会的なコミュニケーションの困難さや空間・人・特定の行動に対する強いこだわりがある等、多種多様な障害特性のみられる発達障害のひとつ」とされています(日本自閉症協会公式Webサイトから抜粋)。

そうした説明以上に、劇中の安田章大演じる大貴の「通勤と仕事の仕方」から早くも、そのASDの特性が分かるでしょう。
何しろ、早朝から仕事に行くまでの道行きで、曲がり角や路面の模様に足を合わせて「直角に曲がる」のです。しかも清掃の仕事の仕方は念入りそのもので、トイレットペーパーの補充では「きちっとした並べ方」に時間をかけすぎて、先輩から「ちり紙なんか適当にちゃちゃーっと並べたらええねんて」などと軽く苦言を呈されていたりもします。

それでいて、彼はアパートでひとり暮らしをしています。「水曜日の19時に必ず食事会をする」ことが決められていて、その時間に妹が少しでも遅れてしまうと大慌てしてしまう……ということもありますが、一定の”決まりごと”の中でちゃんと自立していることが伝わりますし、それを踏まえてASDの“生活”の1つの例を知ることは、とても意義深いと思うのです。

ASDの“天才的な特殊能力”を示す作品が多いからこそ……

ASDを扱う作品では「サヴァン症候群」だからこその驚異的な才能を示すことがよくあります。

会計士を主人公としたアクション映画『ザ・コンサルタント』や、医師が謎めいた事件を解決する小説『天久鷹央の推理カルテ』など、社会的地位が高い職業に就いていたり、“天才的な特殊能力”を持つことを強調する作品も少なくありません。10月19日よりNetflixで配信される韓国ドラマのリメイク『南田南弁護士は天才肌』の主人公も、サヴァン症候群である可能性が高いと思われます。
天久鷹央の推理カルテ
天久鷹央の推理カルテ
そうした作品やキャラクターももちろん良いのですが、この『平行と垂直』のように、実際にもいる多くのASDの人たちのように、決して天才でも、サヴァン症候群とは言えなくても、自分の特性を活かして、社会で必要な仕事に就き、自立して生活している人を描く作品は、もっとあってほしいと思いました。
平行と垂直
(C)2026「平行と垂直」製作委員会
また、劇中には「自閉症って世間では全部ひと括りにしがちやけど、実際は個人差は大きいやろ? そんなかで言うたら、大貴はめちゃくちゃ頑張っているほうや」というセリフもあります。

その言葉通り、ASDに「スペクトラム」という“連続体”や“幅広い範囲”を意味する言葉が付けられているように、その特性や症状は軽度から重度まで途切れることなく連続していてさまざまです。本作だけで「ASDってこうなんだ」と決めつけず、ほかのASDを扱った作品に触れることで、多様性を知ってみてもいいでしょう。
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ASDの特性を「キレイゴト」にしない出来事や心理
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