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東野圭吾入門にもおすすめ、『映画ちいかわ』にも通ずる「業と罪」の物語
結論から申し上げれば、素晴らしい映画でした。「業と罪」を真正面から描く、でも同時に深い慈愛も感じられる東野圭吾の作家性がはっきりと表れており、今に観ると『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』との共通点も見出せるでしょう。 加えて、後述する通りメインプロットはキャッチーですし、登場人物が多めで関係もやや複雑ながら語り口は理路整然としていて分かりやすいため、“東野圭吾入門作”としても大推薦できます。事前に人物相関図に目を通しておくと、より理解がスムーズになるでしょう。 さらに、豪華なキャスティングそれぞれが、原作小説の人物造形に照らし合わせても、これ以上は考えられないほどにハマっています。上映時間は145分とやや長めで、それでも原作からの取捨選択がされつつも、エッセンスは大きく失っていないため、(後述するように原作から削られた部分を不満に思う方もいるかもしれませんが)ほぼ“最適解”と言える映画化ではないでしょうか。 さらなる魅力や、「タイトルの意味」「劇中で観る映画の意図」なども含めて、内容に触れつつ解説しましょう。
※以下、映画『白鳥とコウモリ』の決定的なネタバレを避けつつ一部内容を記しています。また、原作小説との違いについても一部触れていますのでご注意ください。
容疑者の息子と被害者の娘がバディを組む物語
本作で何しろ奇妙かつキャッチーなのは、「殺人事件の容疑者の息子と被害者の娘がバディを組む」ということでしょう。誰もが認めるほどに善良な弁護士・白石健介が車内で刺殺される事件が起こるも、倉木達郎という男性が犯行を自供してあっさりと事件は解決……と思われた矢先、その倉木の息子・和真は「父がしたこととは思えないんです」と強い違和感を告白し、さらに白石の娘・美令もまた「父はそんな人ではありません」などと真っ向から否定するのです。 本来は互いに拒絶しあうのも当然と思える間柄の2人が、それぞれが信頼する「父親像」を根拠に、「本当のことを知りたい」という共通の意志のもとで結託する流れは切実そのもので、心から感情移入できる人は多いでしょう。
ちなみに、原作小説では事件にまつわる心理や推理をじっくりとつづっていることもあり、和真と美令が自分たちの気持ちを打ち明けるのは、文庫版では上巻のラストに至ってのことでした。
一方、映画ではそれまでの過程をタイトに(それでも十分を時間をかけて)仕上げて、早めに「バディもの」だとはっきり示している、もっと言えば「和真と美令が物語の中心」の構成にしているのも良い工夫だと思えました。



