3:あのネットミームを連想する「ダサカッコ良さ」からも逃げてない!
そもそも『マスターズ・オブ・ユニバース』とは、1980年代に発売されたアクション・フィギュア(おもちゃ)であり、アニメやコミックも展開し、1987年にはドルフ・ラングレン主演の実写映画『マスターズ/超空の覇者』も制作されていました。 2023年の映画『バービー』と同様に、マテル社による人形玩具を原作とした映画を現代に蘇らせた企画であり、奇しくも後述する“マッチョイズムの批判”という現代的なメッセージ性も『バービー』と共通していたりもするのです。 そんな『マスターズ・オブ・ユニバース』でアイコニックなのは、何しろ筋骨隆々な肉体かつ金髪で、魔法の剣を持つルックスを持つ「ヒーマン」。アニメや実写映画を見たことがないという方も、再生数が脅威の2億回を記録したネットミームの動画『HEYYEYAAEYAAAEYAEYAA』を見たことがあるのではないでしょうか。 動画の楽曲は「4 Non Blondes」の「What's Up?」のカバー。主演のニコラス・ガリツィンは、テレビ番組『The Tonight Show』での企画の一部として、このミームを再現していたりもするのです。 そして、ヒーマンはこのネットミームの影響もあって、今では見た目もネーミングも「ちょっと笑ってしまう」存在にもなり得ていると思います。しかし、実は本編でもそのことに対する”いじり”があり、コンテンツそのものに漂うある種の「ダサカッコ良さ」さえも批評的に見つめているような、メタフィクション的な構造もまた面白かったりするのです。そんないじりがありつつも、原作に対する圧倒的な愛とリスペクトが伝わってくる、最終的にはヒーマンも、周りのキャラクターもストレートにめちゃくちゃカッコ良く見えてくるというのも本作の美点でしょう。 小道具や衣装デザイナーのスタッフも『マスターズ・オブ・ユニバース』のファンであることを公言しており、細部のこだわりは原作を知っている人ほど感激するはず。
そこには1980年代のカラフルでポップなSFやファンタジー作品の「美学」が確実にあり、『スーパーマン』の初期の映画シリーズや、1980年の映画『フラッシュ・ゴードン』が好きな人にとっても眼福ものだと思うのです。
4:見た目は古き良きマッチョながら、マッチョイズムを批判する物語
主人公のアダムはムキムキの身体を持ち、決め台詞は「I HAVE A POWER!(我が手にパワーを!)」という、古き良きザ・マッチョと言えるキャラクターなのですが、実際の物語では現代的なマッチョイズムを批評している、特に「力が全て」のような価値観をはっきり批判していることも大きな特徴です。
例えば、主人公のアダム(ヒーマン)が父親から「男性的な暴力での抑圧」を押し付けられていることが冒頭ではっきり描かれており、彼自身も「守護者」としての期待に応えようと試みているのですが、一方で「戦う前に話し合おう!」と、まずは対話を試みるという実直さがあるのです。
その後の展開ではアダムのさらなる成長がありますし、それでいてバトルに流れ込むことに欺瞞(ぎまん)を感じさせない物語運びもされています。「ただ悪いやつを倒せばいい」という単純さをもメタフィクション的に捉えるような物語構造そのものも興味深く思えるでしょう。



