ヒナタカの雑食系映画論 第171回

2025年は「日本のホラー映画」が大豊作! “怖いだけではない12作品”を全力紹介してみた

2025年に公開される、「日本のホラー映画12選」を一挙に紹介しましょう! バラエティー豊かな「怖いだけではない」作品が勢ぞろいしていることも、ぜひ推したいのです。(画像出典:(C)2025「見える子ちゃん」製作委員会 (C) 2025「ぶぶ漬けどうどす」製作委員会 (C) 2025「きさらぎ駅 Re:」製作委員会)

見える子ちゃんとホラー映画
『見える子ちゃん』6月6日(金)公開 配給:KADOKAWA (C)2025「見える子ちゃん」製作委員会
『ぶぶ漬けどうどす』6月6日(金)テアトル新宿他全国ロードショー 配給:東京テアトル (C) 2025「ぶぶ漬けどうどす」製作委員会
『きさらぎ駅 Re:』6月13日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷、イオンシネマほか全国ロードショー 配給:イオンエンターテイメント (C) 2025「きさらぎ駅 Re:」製作委員会
2025年も注目の映画が続々と劇場公開されますが、ここでは「日本のホラー映画」に絞って一挙12作品を紹介しましょう。単に「怖い」だけではない、バラエティー豊かな特徴があることも、きっと分かるはずです。

1:『見える子ちゃん』6月6日公開


同名漫画の映画化作品で、「霊が見えているのに見えないふりをする」女子高生役の原菜乃華がとにかく健気で、応援したくなるはず。ちょっと怖いシーンもありつつ、ギクシャクしたコミュニケーションにクスッと笑えたりもする「ホラーコメディー」であり、友情を育む様も丹念に描かれる青春劇にもなっています。

今回の映画では、原作の2巻に登場する「おばけ屋敷」のシーンに着想を得た「学園祭の準備」を物語の主軸としており、映画オリジナルキャラクターの「生徒会長(山下幸輝)」の存在も重要でした。そして、現代のSNS時代においてより身近になった、「スルー」や「無視」という行為をテーマにした寓話(ぐうわ)ともいえますし、その先には意外な感動もある物語に仕上がっています。
見える子ちゃん
(C)2025「見える子ちゃん」製作委員会
実は、とある伏線を活かしたサプライズが重要な内容でもあるので、ネタバレを踏む前になるべく早く見たほうがいいでしょう。原作で見えていた「異形の化け物」も、原作者の泉朝樹の許可を得た上で「霊」となっており、怖さそのものもマイルド(でも怖いところはしっかり怖い?)なので、ホラーが苦手という人も含めておすすめします。

2:『ぶぶ漬けどうどす』6月6日公開


本作のタイトルは「早く帰ってほしいお客に対して本心を隠して遠回しに言う」ことを意味する京都の言葉。ジャンルは「シニカルコメディー」と銘打たれており、なるほど「本音と建前」を使い分ける京都の特徴を扱っているんだなと思いきや……「暴走する主人公がめちゃくちゃ怖い」作品でもありました。

何しろフリーライターの主人公は、コミックエッセイの取材中に、「京都愛」が強すぎるあまり、許可も取らずにテレビで受け売りの情報を語ったり、言動がどんどん過激になり、しまいには自分に合わない人物を“敵”と見なしてしまうのです。「ある価値観が正しいと決めつけて、それ以外のことに排他的になってしまう」様は、誰もが気をつけなければいけない反面教師でもありました。
ぶぶ漬け
(C) 2025「ぶぶ漬けどうどす」製作委員会
脚本を手掛けたアサダアツシは、企画当初に『ローズマリーの赤ちゃん』のような「主人公が実体のない何かに囚われていく物語」を思いついていたそうです。「自分は正しい」「世間に受け入れられる」と主人公が盲目的になり暴走していく様は『キング・オブ・コメディ』も強く連想しました。『笑う蟲』では夫婦だった深川麻衣と若葉竜也が、そちらとは異なる(でも似てもいる?)立場のキャラクターで共演しているのも見どころです。

3:『きさらぎ駅 Re:』6月13日公開


人気の都市伝説「きさらぎ駅」を題材とした、2022年公開のホラー映画の続編です。物語の舞台は前作から3年後。異世界であるきさらぎ駅から生還した女性は、ある理由から世間の冷たい視線や疑いの目にさらされながらも、自分を助けてくれた人々を救うため、再びきさらぎ駅へと向かいます。意外にも「SNS時代の誹謗中傷と偏見」に向き合った内容にもなっているのです。

前作で起こったことは簡潔に説明されますし、本作から見ても内容は把握できると思いますが、それでも前作を事前に鑑賞しておくことを強くおすすめします。なぜなら、「前作の経験を踏まえての異世界攻略」が主眼とも言えるから。一種の「ループもの」でもあり、このジャンルは得てして「繰り返し同じ場面で学ぶ」過程から「テレビゲームっぽさ」を感じるものですが、今回はその魅力が大いにレベルアップしていました。
きさらぎ駅
(C) 2025「きさらぎ駅 Re:」製作委員会
中盤以降は「何を言ってもネタバレ」レベルにサプライズと見せ場が満載なので、「前作が好きな人はとにかく見て!」で終わりにしたいほど。ホラーよりもコメディー要素がマシマシで、大笑いしつつも、ハラハラドキドキできるエンタメ性が存分。見事なオチが用意されているおかげもあってか、映画が終わり試写会場が明るくなった時、周りを見渡すとみんなが楽しそうな笑顔を浮かべていました。こういう作品こそ、みんなを幸せにする映画だと思います。
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