記事執筆時点で映画.comでは4.0点、Filmarksで3.8点とレビューサイトでの評価も高め。視聴者数もとてつもなく多く、日本の週間TOP10(映画)で2週連続で1位、週間グローバルTOP10(非英語映画)でも初登場1位、さらには世界52の国と地域で週間TOP10入りを果たしました。
そして、その『シティーハンター』以外でも、2024年は続々と「漫画の実写映画化作品」が世に送り出されています。1月に劇場公開された『ゴールデンカムイ』および『カラオケ行こ!』(Netflixで配信中)も好評でしたが、ここからは今後に公開される『シティーハンター』を含む10作品を紹介し、実写映画化が成功する理由はどこにあるのかを分析していきましょう(記事の最後に結論を記しています)。
1:『シティーハンター』Netflixで配信中
満場一致の勢いで絶賛されているのは主演の鈴木亮平。その肉体と身のこなしから一流のスイーパー(始末屋)である冴羽リョウになりきっており、役作りどころか銃の扱いにも余念がなく、6種の銃をノールックで操れるようモデルガンで練習し、本物の銃の反動や危険性を知るために海外で実銃の訓練も受けていたそうで、そのかいあってのスピーディーな「銃さばき」にほれぼれします。
さらには、「もっこり」という言葉に代表されるスケベな印象と、それとギャップのあるかっこよさが、アニメ版の神谷明にとても近い声色で表現されていることにも驚きました。鈴木亮平自身が、2011年にブログで「日本版シティーハンター、冴羽リョウ、まじでやりたいなぁ」と投稿しており、その夢をかなえたことも話題に。相棒である槇村秀幸役の安藤政信、ヒロインの香役の森田望智も役にピッタリだと称賛されています。
さらに、物語も原作の冒頭部もなぞりながらも、スマートフォンやSNSが登場する現代の世相を反映するなどのアップデートをしつつ、一種の「バディもの」「探偵もの」としても過不足なくまとまっています。また、原作の「香がハンマーで制裁する」デフォルメしたギャグを、実写で違和感なく成立させたとある手法に「その手があったか!」と感心してしまいました。
余談ですが、同じく佐藤祐市監督の『累-かさね-』は、原作のダウナーな印象を生かした鮮烈なビジュアル、独自の驚きの展開、そして芳根京子と土屋太鳳の熱演など、こちらも全方位的に見事な漫画の実写映画化作品になっていたので、ぜひ合わせて見てみてほしいです。
2:『バジーノイズ』5月3日より劇場公開中
孤独だった青年が音楽の道へと足を踏み入れる青春映画で、「放っておけなくなる」ような魅力がある川西拓実と、天真らんまんのようで複雑な感情を合わせ持つ桜田ひよりの掛け合い、いい意味で寂しさを(それ以外の感情も)感じさせる音楽と歌声を実際に聞けることに、実写映画化の意義を大いに感じました。「横断歩道の前で信号待ちをする」シーンが原作にはない映画オリジナルの描写になっているなど、アレンジの仕方も見事です。
また、5月10日より劇場公開中のアニメ映画『トラペジウム』とは、主人公(ヒロイン)の「エゴ」を隠そうとしていない、「正しくなさ」にも向き合った青春音楽映画であることが共通していますし、どちらも「JO1」のメンバー(川西拓実または木全翔也)が好演しています。アニメと実写それぞれの特徴を生かした演出や表現の豊かさは、両者を見てこそより感じられるかもしれません。
3:『不死身ラヴァーズ』5月10日より劇場公開中
「なぜか両思いになった瞬間に消える運命の相手を求め続ける」という、かなり変わった設定のラブストーリーです。監督は『ちょっと思い出しただけ』が大好評を博した松居大悟で、直近作ではほぼ封印していた超現実的な出来事を描く、「ぶっ飛んだ」作家性が全力疾走フルスロットル。中盤からは、勢いのある前半とはまた違ったトーンの関係性になることも見どころです。
その松井監督は本作の企画を10年以上にわたり温め続けてきていたそうで、なんと原作漫画とは男女が入れ替わっています。それでも一途(いちず)を超えて「猪突(ちょとつ)猛進」な恋のパワーは全く損なわれていませんし、見上愛と佐藤寛太という俳優の力もあって彼女たちを心から応援したくなりました。いい意味でリアリストで冷めたところもある前田敦子のキャラクターも強い印象を残すでしょう。
4:『告白 コンフェッション』5月31日に劇場公開
物語の発端は「16年前に親友の女性を殺害した」と告白してしまったこと。その後はビクビクし続ける生田斗真VS底知れなさのあるヤン・イクチュンの心理&物理バトルが、山小屋を舞台に74分でみっちりと展開する、ワンシチュエーションもののスリラーです。原作とは異なり、恐るべき相手が元留学生の韓国人になっていて、これが同じく雪山の山荘での出来事を描いた『落下の解剖学』に通ずる「異なる言語の意味が完全には分からない」緊張感につながっていた、実に良いアレンジでした。
山下敦弘監督は『カラオケ行こ!』などのコメディーや青春劇の方が得意な印象があったため、ここまで作風の異なる怖い映画でも、人間の内面を鮮烈にあぶり出していることに感心しました。その山下監督いわく、本作の企画が立ち上がったのは2018年で、シナリオ作業に難航し、さらにコロナ禍によって2度の撮影延期を経て、ようやく完成した労作でもあるようです。
さらに、山下監督による青春劇『水深ゼロメートルから』が5月3日より劇場公開中、「ロトスコープ」によるアニメ映画『化け猫あんずちゃん』が7月19日に劇場公開予定です。