ヒナタカの雑食系映画論 第90回

『猫の恩返し』が大好きな人に見てほしい。最新「猫映画」5作品でほっこり癒されまくろう

金曜ロードショーで『猫の恩返し』が放送されることを記念して、2020年以降に公開された最新「猫映画」おすすめ5作品を紹介しましょう。猫の気ままっぷりに、ほっこりと癒されるかも。(サムネイル画像出典:(C) 2002 Aoi Hiiragi/Reiko Yoshida/Studio Ghibli, NDHMT)

猫の恩返し
(C) 2002 Aoi Hiiragi/Reiko Yoshida/Studio Ghibli, NDHMT
2024年5月3日、『金曜ロードショー』(日本テレビ系)でアニメ映画『猫の恩返し』が地上波放送されます。

『耳をすませば』の月島雫が大人になってから書いた物語

『猫の恩返し』はスタジオジブリ作品『耳をすませば』の主人公である「月島雫が書いた物語」という設定のスピンオフ。原作者である柊あおいは「『耳をすませば』の時よりも雫は成長して、かつて書いた“(猫の)バロンが旅をする物語”を書き直しているのではないか」「大人になった雫が書いたものという風にしよう」と考えていたのだとか。
 

そんな『猫の恩返し』の内容は、かわいい&かっこいい猫たちと冒険を繰り広げる、ギャグも多めで明るくて楽しい、スタジオジブリでは異色といえるもの。『耳をすませば』劇中の月島雫は中学3年生の受験生で「焦っている」中で物語を書いていたのですが、今度は大人になってから余裕を持って書いたからこそ、そうした作風に仕上がったという解釈も可能でしょう。
猫の恩返し
(C) 2002 Aoi Hiiragi/Reiko Yoshida/Studio Ghibli, NDHMT
いい意味で「どこかのんびりとしていて、危機的な状況でもなんだかゆるい」感じは、疲れがちな現代人に響くでしょうし、それこそ猫の「自由気まま」な印象ともシンクロしていて、なおかつ「心のスキマにつけ込まれてしまう」怖さがちょっとだけ描かれているのも、いいあんばい。「あー楽しかった!」と見終えることができるのも、この『猫の恩返し』が愛され続ける理由なのは間違いありません。
猫の恩返し
(C) 2002 Aoi Hiiragi/Reiko Yoshida/Studio Ghibli, NDHMT
さて、ここからは『猫の恩返し』が好きな人にもおすすめしたい、2020年以降に公開された最新「猫映画」おすすめ5作品を紹介しましょう。癒し効果たっぷりの猫を眺めることは、5月病の対策にもなるかもしれませんよ。

1:『泣きたい私は猫をかぶる』(2020年)


Netflixオリジナルのアニメ映画で、『猫の恩返し』ととても近い精神性を持っています。その理由の筆頭は、「猫は気楽でうらやましいなあ」という多くの人が抱く感情を、本当に猫へと変身するファンタジーをもって描いていること。だけど、そうした「現実逃避」はやはり根本的な解決にはならないし、猫のまま過ごすことで「元の姿に戻れなくなるかもしれない」という危険性まで示しつつも、猫として気ままに駆け回る様がとても魅力的に描かれています。

同じくNetflixで配信中の『アリスとテレスのまぼろし工場』では監督も務めた岡田麿里の脚本らしい、エキセントリックな主人公像や、クセの強いあだ名やセリフ回しは、ある程度は好き嫌いも分かれるでしょう。でも、その作風だからこそ描かれる、周りとは違う「変人」であることは実は普遍的で、それこそ思春期の少年少女が持ちうる当たり前の悩み。そこに寄り添う作り手の優しさを大いに感じたのです。

なお、制作を手がけたのは『ペンギン・ハイウェイ』や『雨を告げる漂流団地』のスタジオコロリドで、その最新作『好きでも嫌いなあまのじゃく』が5月24日よりNetflixで独占配信&一部劇場で公開予定です。2024年に続々と公開されるアニメ映画の1つとして、とても期待をしています。

2:『長ぐつをはいたネコと9つの命』(2023年)


誰もが楽しめるアニメ映画の理想型だと太鼓判を押せるのがこちら。『スパイダーマン:スパイダーバース』を彷彿(ほうふつ)とさせる、コミックの質感に近いビジュアルと、冒頭から繰り出されるダイナミックなアクションに目がくぎ付け。三つ巴(またはそれ以上の)お宝争奪戦は子どもにも分かりやすく、「はみ出し者」たちが人生の目的を見つける物語は大人にこそ響くのではないでしょうか。

中でも主人公のプスは「命知らずで無鉄砲なヒーロー」だったのですが、「9つの命のうち8つまでを使い切って次に死ぬとアウト」な状況になり、すっかり臆病になって「隠居生活」をする様は身につまされます。だからこそ彼が愛おしくなるし、悲惨な状況にいても常にポジティブシンキングで不憫な「ワンコ」も応援したくて仕方がなくなるはず。敵である「死神」のオオカミ(声:津田健次郎)がものすごくかっこよく、かつ怖いのもたまりません。Amazonプライムビデオで見放題配信中です。
次ページ
今泉力哉監督が描いた「猫」映画
Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

連載バックナンバー

Pick up

注目の連載

  • ヒナタカの雑食系映画論

    2024年は漫画の実写化映画の当たり年!? 『シティーハンター』など10作品から「成功の理由」を考える

  • 世界を知れば日本が見える

    もはや「素晴らしいニッポン」は建前か。インバウンド急拡大の今、外国人に聞いた「日本の嫌いなところ」

  • 海外から眺めてみたら! 不思議大国ジャパン

    外国人観光客向け「二重価格」は海外にも存在するが……在欧日本人が経験した「三重価格」の塩対応

  • 恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」

    JR九州の新しい観光列車「かんぱち・いちろく」乗車リポ! 他の列車にはない“一風変わった体験”があった