同賞にノミネートされていた新海誠監督作『すずめの戸締まり』は惜しくも受賞を逃しましたが、ハリソン・フォードが『すずめの戸締まり』の「草太の椅子」を持っている写真が話題に。こちらも世界に認められる作品になったと言っていいでしょう。 さて、ここでは新海誠監督がX(旧Twitter)に2023年に絶賛の感想を投稿した映画&漫画作品を紹介しましょう。推薦の言葉それぞれが秀逸ですし、中には『すずめの戸締まり』をはじめとした新海誠監督作品に通ずる要素もあるため、ファンこそチェックしてほしいのです。
1:映画『怪物』
是枝裕和監督作『怪物』は第76回カンヌ国際映画祭において脚本賞とクィア・パルム賞を受賞し、アメリカの元大統領であるバラク・オバマの「2023年お気に入り映画リスト」にも選ばれるなど、世界中で絶賛で迎えられています。2023年の実写日本映画の最重要作でしょう。 新海誠監督は「精緻な脚本」でありつつも「構造に束縛されることなく豊かな映画」になっていることを絶賛。まったくその通りで、特殊な物語構造は決して気をてらったものではなく、計算し尽くされた作劇でありつつも、「描かれていないことにも想像がおよぶ」映画ならではの魅力を突き詰めているともいえるでしょう。
筆者としては「子どもたちがこつ然と姿を消してしてしまう」ミステリーであること以外の予備知識を入れず、どこに連れて行かれるのか分からない、翻弄(ほんろう)される面白さを堪能してほしい1本です。Blu-ray&DVDは2024年2月21日に発売となります。
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2:映画『雄獅少年/ライオン少年』
中国製の王道のスポ根アニメ映画で、日本では2022年にごく小規模で上映された字幕版が熱烈な支持を受け、2023年に超豪華な吹き替え声優の日本語吹き替え版が公開となりました。 新海誠監督が褒めたたえるのは、怒濤(どとう)のクライマックスへとなだれ込む終盤の素晴らしさ。確かに、鳴り響く太鼓の音にシンクロする熱い展開、ラストシーンの「キレ」の素晴らしさ、エンドロール後すぐのおまけの映像の余韻、流れる歌の歌詞の力強さなど、それぞれが思い出すと涙が出てくるほどのものでした。
ちなみに、新海誠の言う「ビルドゥングスロマン」とはドイツ語であり「教養小説」とも訳され、「主人公がさまざまな体験を通して内面的に成長していく過程を描く」物語を指します。中国の深刻な貧困問題を背景に、安易な解決をすることなく、まさに内面の「強さ」を描いたことにも感動がありました。
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