5:映画『アリスとテレスのまぼろし工場』
『チェンソーマン』などの制作会社MAPPAによる、超美麗な背景や躍動感あふれる表現を堪能できるアニメ映画です。何より重要なトピックは、テレビアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(フジテレビ系ほか)などの脚本家としても知られる岡田麿里監督の作品だということでしょう。 「情景も言葉も人物も常にぎりぎりに張り詰めていて、世界にはよそよそしい謎ばかりがある」という表現はとても的確で、登場人物の心が壊れてしまいそうな危うさ、いい意味で居心地の悪い謎が全編にちりばめられており、劇中で提示される「閉塞感」は新海誠監督だけでなく多くの人が経験しているものでしょう。個人的な見解ですが、この『アリスとテレスのまぼろし工場』は、『雲のむこう、約束の場所』や『秒速5センチメートル』の頃の、ややダウナーな青春劇の要素が色濃かった新海誠監督作を思い出す内容でもありました。Netflixで1月15日より独占見放題配信となります。
【関連記事】宮崎駿、新海誠だけじゃない。作家性にあふれた「原作がないオリジナルアニメ映画」の傑作を見てほしい
【関連記事】2023年の「日本アニメ映画ベスト10」をランキング化してみた。年末年始は映画館で1位と4位を見てほしい
6:映画『ミステリと言う勿れ』
同名人気漫画を原作とするテレビドラマの劇場版です。あらすじは「変わり者の大学生が莫大な遺産相続に関する謎解きに巻き込まれる」という分かりやすいもので、『犬神家の一族』に通ずるミステリーとして万人が楽しめる内容になっていました。 新海誠監督にとっては、『すずめの戸締まり』で主人公の岩戸鈴芽の声を担当した原菜乃華がメインキャストとして大活躍する内容なので、もちろん(ほかの俳優をたたえつつ)原菜乃華推し。それでいてコミカルとエモーショナルな物語のバランスを称賛していました。筆者個人としては、原菜乃華がいい意味でクセがある、俳優自身の魅力を推したような演技をしており、『すずめの戸締まり』との声の演技とはモードが少し異なることも感心させられました。菅田将暉演じる主人公との関係性も独特で愛おしいですよ。