7:『ストールンプリンセス:キーウの王女とルスラン』
ウクライナのアニメ映画が日本で初めて劇場公開された作品です。その内容は前述した『兵馬俑の城』にも似ているザ・超王道の冒険活劇&ラブストーリー! 騎士に憧れる役者の青年と、自由を求めて王宮から抜け出した王女が出会い恋に落ち、オリジナリティのあるバラエティ豊かな見せ場が続く、まさに子どもから大人まで楽しめる作品に仕上がっていました。さらなる注目ポイントは、日本の女性が私財のほとんどを投じて日本配給権を獲得し、クラウドファンディングで約950万円を集めるなどして、映画館での上映を実現させたこと。収益の一部はウクライナに寄付されます。その行動力と社会貢献度の高さが評価され、粉川(こかわ)なつみさんは『日経ウーマン』の各界で目覚ましい活躍を遂げた女性を表彰する「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2024」の受賞者8人のうちの1人に選ばれました。作品の外にある「物語」もまた応援したくなる映画なのです。
2023年の優れた海外アニメ映画はまだまだたくさんある!
ほかにも、中国製の『雄獅少年 ライオン少年』は万人におすすめできる王道のスポ根映画でしたし、チリ製の『オオカミの家』は極めて実験的で人を選ぶ作風ながらも絶大なインパクトがありました。はたまた、フランス・ベルギー合作の『古の王子と3つの花』はエジプトの壁画や影絵が動いているような、平面的ながら豊かなアニメを堪能できる内容でした。
さらに、スパイダーマン作品どころか、2023年全ての映画の中でもトップクラスの評価を得た『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』もありました。
前作『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018年)も漫画の表現をそのままアニメに持ち込んだ革新的な作品でしたが、今回はあまりの情報量の多さととんでもないアクションのつるべうちに脳の処理が追い付かないほど。2024年公開予定の3作目『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』が待ち遠しくて仕方がありません。
映画ではなくシリーズ作品ですが、Netflixオリジナルの『BLUE EYE SAMURAI/ブルーアイ・サムライ』は、江戸時代の日本を舞台に復讐(ふくしゅう)劇が展開する、殺傷描写と性描写もある大人向けアニメでした。
美しい風景を筆頭に日本文化へのリスペクトに満ち満ちていながらも、当時の社会の理不尽さにも真摯(しんし)に向き合っているので、日本人こそが見るべき内容でしょう。
もちろん、海外のアニメ映画はここで紹介したものでもほんの一部。ぜひ、紹介した7作品から、海外アニメ映画の豊かさを知ってみてください。
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。