5:『劇場版ツルネ -はじまりの一射-』(弓道)
水泳競技を描く『Free!』も大人気を博した、京都アニメーション制作による作品。テレビアニメ版に新規カットを追加した総集編ではあるのですが、起承転結のある1本の映画として過不足なくまとめられているので、予備知識がなくても単体で楽しめます。
物語の中心にあるのは、弓引きの病ともいわれる「早気(はやけ)」にかかってしまった主人公が、それをどのように克服し、心変わりをしていくかということ。スポーツに限らないイップス、スランプの寓話としても読み取れます。繊細で丁寧な友情の物語、さすがの“京アニクオリティ”の作画とエモーショナルな演出のおかげで、心地よくて美しいものを見届けたと感動があります。
6:『BLUE GIANT』(ジャズバンド)
18歳の若者たちがジャズバンドを結成する青春音楽映画です。もちろん厳密にはスポーツではないのですが、全くの素人ががむしゃらに努力を重ねたり、傲慢(ごうまん)だった実力派が壁にぶち当たってもがいたり、かつ大舞台で「全てをぶつける」様は、まさにスポ根ものの魅力。観客は、きっと3人の若者それぞれの「ファンのおじさん」の気持ちに同調して、彼らのことを応援できるでしょう。
何よりの魅力は、躍動感のあるアニメの表現の数々と、プロ奏者がキャラクターの感情までもを乗せて表現した演奏の迫力。ジャズを全く知らない人こそが魅了されることも間違いありません。2023年2月17日からの公開から絶賛の口コミが相次ぎリピーターも続出、興行収入は10億円を突破し、現在もロングラン上映が続いています。できる限り、音響の優れた集中できる環境で見てほしいと心から思える大傑作です。
7:『雄獅少年/ライオン少年』(獅子舞競技)
※2023年5月26日より吹き替え版が劇場公開
こちらは日本ではなく、中国で制作された3DCGアニメ映画。負け犬少年3人組が獅子舞競技のチームを結成し、師匠に弟子入りする物語で、『ベスト・キッド』を連想する王道のスポ根もの。コミカルな描写も多くクスクスと笑えるかと思いきや、これ以上のない屈辱的な目にも遭いながら、決して諦めない若者たちにとことん感情移入ができます。
とにかく、獅子舞の演技とアクションのクオリティが半端ではなく、それぞれが難関極まりないアスレチックをチームでクリアしていくような面白さがあります。それでいて、中国社会にある貧困の問題もつぶさに反映されており、伏線回収も見事。獅子舞競技というローカルな題材でありながら、世界中の全ての人が勇気をもらえるであろう「不屈の精神」「希望となる奇跡」をたたえていました。
なお、最初はごく小規模公開だった「中国アニメ映画の字幕版」で絶賛が寄せられ、後に豪華な声優陣による日本語吹き替え版が公開される流れは、ファンタジー作品の『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』にも通じています。
『羅小黒戦記』で中国のアニメ映画の魅力を知った人はもちろん、子どもも大人も分け隔てなく最高峰のスポ根アニメ映画を楽しめる『雄獅少年/ライオン少年』が劇場で上映されることは奇跡のようなもの。この機会を絶対に逃さないでほしいのです。
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