ヒナタカの雑食系映画論 第53回

ディズニーやピクサーだけじゃない! 2023年の「すごい海外アニメ映画」7作品を本気で選んでみた

ディズニーやピクサーだけじゃない、「これだけは見てほしい!」と心から思える海外アニメ映画を、2023年公開&配信作品から7つ厳選して紹介します。※画像出典:『ペルリンプスと秘密の森』 (C) Buriti Filmes, 2022

5:『プチ・ニコラ パリがくれた幸せ』

原作はフランスで50年以上にわたり愛され続ける児童書『プチ・ニコラ』。最大の特徴は、親友同士でもある原作者2人の波乱に満ちた人生と共に、その『プチ・ニコラ』の中の物語も並行して語られる構成。親友同士の作家2人が漫画を創作し始める、日本の漫画『バクマン。』(集英社)のような物語としても楽しめるでしょう。

絵本そのままのタッチの愛らしいキャラクターが豊かに動く様は、ジブリ映画の『ホーホケキョ となりの山田くん』(1999年)を思わせます。やんちゃな男の子が活躍する、ちょっとシニカルでありつつもあたたかい物語は、原作者2人のどのような体験の元で創り出されたのか……その「想像」と「創造」の力を、アニメにより紡ぎ出したことに意義を感じられるはずです。

6:『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』

過去に実写映画化もされたコミック『ミュータント・タートルズ』の新たなアニメ映画版で、今作は原題に「“Teenage” Mutant Ninja Turtles: Mutant Mayhem」とある通り、多感な10代の少年たちの葛藤が色濃く描かれています。学校に行ったり、恋をしたりと願いつつも地下でひっそりと暮らし続ける主人公4人の姿は、「世間や誰かに受け入れられたいと願うけど、拒絶されることを恐れて一歩を踏み出せない」普遍的なティーンエージャーの悩みそのものなのです。

前述した『長ぐつをはいたネコと9つの命』にも通ずる、漫画のタッチをそのままアニメに持ち込んだような表現&ダイナミックなアクションには目がくぎ付け! 偏見にまつわる寓話はSNSのある今だとより胸に突き刺さります。カタルシス抜群のクライマックスは涙が出てくるほどの感動がありました。

漫画『進撃の巨人』(講談社)、『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)の小ネタが登場するほか、ゲーム『塊魂』に影響を受けた表現など、日本のカルチャーへのリスペクトにも大注目です。
次ページ
素晴らしいアニメ映画はほかにも!
Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

連載バックナンバー

Pick up

注目の連載

  • 「港区女子」というビジネスキャリア

    港区女子は、なぜここまで嫌われる? 自活する女性から「おごられ」「パパ活」の代名詞になった変遷

  • ヒナタカの雑食系映画論

    草なぎ剛主演映画『碁盤斬り』が最高傑作になった7つの理由。『孤狼の血』白石和彌監督との好相性

  • 世界を知れば日本が見える

    もはや「素晴らしいニッポン」は建前か。インバウンド急拡大の今、外国人に聞いた「日本の嫌いなところ」

  • 海外から眺めてみたら! 不思議大国ジャパン

    外国人観光客向け「二重価格」は海外にも存在するが……在欧日本人が経験した「三重価格」の塩対応