ジュリー藤島社長の「最悪」だった対応
まず、ジュリー藤島社長は叔父の犯罪行為を「知らない」と断言したが、これは企業危機管理の常識からはありえない「悪手」だ。通常このように「次々と被害者が名乗り出て、新事実が明らかになっていく流動的な時期」に経営トップは「調査中です」などを繰り返して決して断定的な物言いをしないというのが鉄則だ。
後で簡単にひっくり返されて、経営トップとしては命取りの「うそをついた」ということになってしまうからだ。実際、ジュリー藤島社長の「知らなかった」発言には、近藤真彦さんや元「忍者」のメンバーなどから「そんなわけがない」と全否定されている。
残念ながら、こういう「うそつき」のレッテルを貼られた経営者が助かる道はない。では、次に誰がトップになるかだが、所属タレントはやってはいけない。被害者かもしれないし、性加害を黙認して傍観していたかもしれない「関係者」がトップの座に座ったところで、再びどこかで「過去」が蒸し返されてしまう。やはり外部から新しい経営者を招くのがベストだ。
社名変更もマスト
そして、社名変更もマストであることは言うまでもない。日本人は「あの人は性犯罪もしたかもだけど、日本のショービジネスへの貢献は計り知れないよね」なんて感じで「功罪」を評価することが多いが、海外では「どんなに立派なことをしても性犯罪をしたら社会的評価はゼロ」が当たり前だ。
「性犯罪者」と目される人の名を冠した事務所のタレントは、グローバルでビジネスを展開する大企業は広告起用しづらい。ジャニー喜多川氏のやったことを全否定したくないという社員や所属タレントの願いもあるかもしれないが、「組織を守る」というのはそういうことだ。
以上の3つはジュリー藤島社長にとって、なかなか受け入れ難いものもあると思うが、ファンや所属タレントのためにもぜひご決断を願いたい。
窪田 順生 プロフィール
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経てノンフィクションライター。また、報道対策アドバイザーとしても、これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行っている。
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