ICPOとは? 捜査権や逮捕権はどうなっているのか
そもそも、ICPOには捜査権もなければ逮捕権もない。ICPOといえば、日本人には人気作品『ルパン三世』で手錠を振り回しながらルパンの逮捕に執念を燃やす銭形警部を想像するかもしれないが、ICPOには逮捕権はないので手錠を持つことはない。
ただICPOには世界各地の警察官が集まっているので、彼らは自国に戻れば犯罪者を摘発できるが、国の一歩外に出れば、警察の仕事はできない。ICPOは、195の国と地域が加盟しているが、加盟国からの犯罪者情報のほか、紛失パスポートや盗難車のデータなどを集めて、データベースにして加盟国に共有している。
また手配された人の住所を特定して身柄拘束を求める赤手配書や、情報を求める黄色手配書や青色手配書などを発行する。ただし手配書には拘束力はない。
参考:国際犯罪対策(警視庁)
ガーシー元議員の逮捕は国家間の交渉が鍵となるか
だが、日本と友好的な関係にある国にガーシー元議員が入国する場合には、現地の警察などが何らかのアクションを起こす可能性がある。この場合も国家間の交渉が鍵になるだろう。
ICPOの公式サイトでは国際手配になっている人たちのデータベースを利用できるが、日本国籍の人物は3人のみで、現時点ではガーシー元議員は含まれていない。
こう見ると、ガーシー元議員が旅券が失効した後にすぐに捕まって強制帰国させられる可能性は高くないことが分かる。あとは、UAEまたは、ガーシー元議員が移動した先の国の判断に委ねられることになるだろう。
もしくは抵抗せずに帰国して逮捕され、公判で自らの言い分を主張するしかない。さもないと、国際逃亡犯として海外でこそこそと肩身の狭い思いをしながら暮らすしかないのである。
山田 敏弘 プロフィール
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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