世界を知れば日本が見える 第20回

「ChatGPT」のユーザー数が世界TOP3に入る日本だが……使う前に知っておくべき事実

「ChatGPT」が話題だが、実は既にその危険性も指摘されている。実際に何が危険で、どんな懸念が噴出しているのか整理してみたい。

話題の「ChatGPT」だが、その危険性も既に指摘されている(画像はイメージ)

「ChatGPT」が2022年11月に無料で公開されて以降、昔からよく耳にした「AI(人工知能)」という言葉が新たな命を吹き込まれたかのように、再び表舞台で話題になっている。
 

ChatGPTは、アメリカのベンチャー企業「OpenAI(オープンAI)」が開発した技術で、インターネットでAIに何か質問をするだけで、自然な文章で回答が返ってくる優れものだ。ChatGPTの言語モデルとなっているのが「GPT」と呼ばれているシステムで、2023年3月に最新バージョンである「GPT-4」が公開された。こちらは2022年11月に公開されたものよりも数段優れている。ちなみに今後ChatGPTは、「GPT-5」などに進化していくだろう。
 

IT業界の話題をさらっているGPT-4には日本政府も興味を示しており、最近日本を訪問したOpenAIのサム・アルトマンCEOを与党の勉強会に招いていた。
 

そんな注目のChatGPTだが、実は既にその危険性も指摘されていて、確かに使用には注意すべき点がある。そこで、実際に何が危険で、どんな懸念が噴出しているのか整理してみたい。
 

教育機関や教育委員会がすぐに拒否反応

ChatGPTが話題になると、すぐに拒否反応を示したのが教育関係機関だった。なぜなら、このAIを使えば、学校でのリポートや作文、読書感想文に至るまで、いとも簡単に書いてくれるからだ。そんなことから、既に学生の間での使用制限に乗り出した教育機関も少なくない。
 

アメリカではニューヨーク市の教育委員会がChatGPTの使用を禁じたほか、ロサンゼルスやシアトル、ボルティモアなどが使用禁止に向かっていると報じられている。オーストラリアでは学校での使用が禁じられ、フランスやインドでも一部学校で使用が規制される事態になっている。
 

ただこれは無駄な抵抗にも思える。この先、AIが教育機関にも入り込むのは間違いなく、拒絶よりも共存の方法を見つけるほうが建設的だからだ。計算機やタブレットなど普及当時はアメリカの教育機関でも拒否反応が出て、禁止するところもあったが、今では当たり前に使われている。学びを助ける使う方をすればいい。
 

教育機関以外でも

懸念は教育機関以外からも出ている。日本でも報じられている通り、イタリアが政府として規制に乗り出している。イタリアは、AIが学習のために膨大な個人情報を集めることで、個人情報保護に関する法律に違反する可能性があり、政府が一時的に使用禁止措置を取った。使用には、ユーザーの年齢確認やデータ使用の許可を取ることなどが求められている。さらにAIを学習させるために必要になる大量のデータ収集をイタリアで行うことができるかどうかも問題になった。
 

イタリアの動きは、2018年に個人データの保護を目的に制定されたEU一般データ保護規則(GDPR)に則したものであり、欧州データ保護会議(EDPB)や消費者団体が集まる欧州消費者機構(BEUC)なども、ChatGPTによるデータの取り扱いについて協議を行っていることから、この流れは他国にも波及することが考えられる。事実、フランスやスペインでも議論になりそうだ。


>次ページ:ChatGPTに入力したデータはどうなるのか

 

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