世界で最も稼いでいるアスリート
世界的に野球の人気が比較的低い事実は、選手らの収入からも見えてくる。
現在、大リーグを代表する投手であるニューヨーク・メッツ所属のマックス・シャーザー選手は、年俸の平均が約4300万ドルだ。日本が誇るメジャーリーガーである大谷翔平選手の年俸は、昨季550万ドルから現在は3000万ドルに大幅にアップした。この年俸は、メジャーリーグのトップ15位に入る金額だという。
もちろんとんでもない金額なのは言うまでもないが、ただ世界を見ると上には上がいる。想像通りかもしれないが、世界で最も稼いでいるアスリートはサッカー選手だ。
世界1位はフランスのパリ・サンジェルマンに所属するリオネル・メッシ選手で、世界一のプレーヤーとして知られるメッシ選手の年俸は、約1億9000万ドル。シャーザー選手の年俸にスポンサー料金などをプラスしても、メッシ選手はメジャーリーグで最も稼ぐ選手よりも何倍もの額を手にしている。
・リオネル・メッシ選手のInstagram
年俸ランキング2位は、NBAのレブロン・ジェームズ選手だ。その額は、約1億2000万ドルほど。3位は、サッカーのクリスチアーノ・ロナウド選手で約1億1500万ドルである。
別のスポーツでは、テニスのロジャー・フェデラー選手が約9070万ドルで7位に入っている。8位にはボクシングのサウル・アルバレス選手は約9000万ドル。大リーグの選手はトップ10にも入っていない。
ただ日本人から見れば、野球はスポーツとして十分面白い。だからこそ、アメリカでも日本でも、長年、国民から愛されてきたのである。それでも、人気と、動くお金が比例する以上、年俸などのランキングも、世界的な野球人気の実態を物語っているといえる。
ハーバード大学のグレイザー名誉教授による前出のコメントのように、米テレビ局CNNも、野球は長い試合時間の割に動きがあまりないことで、テレビの前に座って最後まで見る行為が今の若い人たちにはフィットしないのかもしれないと、現在の野球人気の低迷について分析している。
確かに動画や映画をオンラインで早回しして見ている人たちにとっては、野球はスローかもしれない。ただそれでは野球の醍醐味(だいごみ)である駆け引きなどは感じられないだろう。そうなると、今後ますます野球離れが進むかもしれない。そうならないためにも、超一流選手たちがSNSなども使ってどんどん盛り上げていってもらいたい、と願うばかりだ。
山田 敏弘 プロフィール
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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