ヒナタカの雑食系映画論 第236回

『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』が「史上もっとも優しいヒーロー映画」になった理由。予習したい作品は?

『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』に「予習」は必要?ということの他、事前に知っておいてほしいポイントを解説しましょう。(画像出典:(C)2026 CPII. All Rights Reserved. (C)& TM 2026 MARVEL)

事前に『ノー・ウェイ・ホーム』だけでも見ておいてほしいけど、それよりも……

今回の『ブランド・ニュー・デイ』は、究極的には関連作品を見ていなくてもいい、何も予習はしなくても大丈夫、とひとまずは申し上げておきます。
スパイダーマン
(C)2026 CPII. All Rights Reserved. (C)& TM 2026 MARVEL
何しろ、冒頭でスパイダーマンことピーター・パーカーが前作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でどのような状況に置かれたかは簡潔に示されていますし、基本的な物語の流れは「新たな未知の敵が出現したため立ち向かう」というシンプルなものです。

本作に限らず、近年のハリウッド大作の続編、特に『サンダーボルツ*』をはじめとしたMCUは、おおむね一見さんにも入り込みやすくする工夫はしっかりされているのです。 とはいえ、「キャラへの思い入れ」はもとより「これまで何があってどういう気持ちの移り変わりがあったのか」を知っておいたほうが、さらに感情移入ができて楽しめるのは事実。特に前作『ノー・ウェイ・ホーム』での出来事は今回の物語やピーターの心境に密接に絡んでいるので、やはり可能であれば見ておいたほうがいいでしょう。
しかしながら、その『ノー・ウェイ・ホーム』もまた、「過去の映画『スパイダーマン』の悪役たちが登場する」ため、できればトビー・マグワイア主演の『スパイダーマン』3部作や『アメイジング・スパイダーマン』2部作を見ておいたほうが良くて、さらにトム・ホランド主演の1作目『スパイダーマン:ホームカミング』と2作目『ファー・フロム・ホーム』もできれば……といった感じに、ファン目線だとさらに「見てほしい」作品が増えてしまうのです。

そもそも、映画という「楽しむ」ためのエンターテインメントに、「勉強」のようなニュアンスのある「予習」をしなければならないというのも、個人的には窮屈な印象を抱いてしまいます。それよりも、「映画館という最高の環境で見逃さないでほしい」「過去の映画は後追いでも構わないから」と、『スパイダーマン』やヒーロー映画に馴染みがない人の背中を押したいのです。

理想的なヒーローとは呼べない「パニッシャー」が登場

『スパイダーマン』関連作以外で重要となるのは、今回「パニッシャー(本名:フランク・キャッスル)」というキャラクターが登場することでしょう。
パニッシャー
(C)2026 CPII. All Rights Reserved. (C)& TM 2026 MARVEL
今回の『ブランド・ニュー・デイ』におけるパニッシャーはスパイダーマンの味方(?)となっているのですが……そのパニッシャーはもともとは家族を殺害され復讐(ふくしゅう)心を燃やしている、犯罪者を容赦なく殺害する私刑執行人(ヴィジランテ)です。

殺人をもいとわないパニッシャーは、スパイダーマンが悪役の命を奪うことを良しとはしないこととはっきり対立する価値観を持っている、「理想的なヒーローではない」ことは知っておくといいでしょう。

つまりはパニッシャーについても予習は必要ではないのですが、1つだけ事前に(後でも)見ておくといい作品として、2026年5月に配信されたばかりの、Disney+(ディズニープラス)で配信中の単発ドラマ『パニッシャー ワン・ラスト・キル』をおすすめしておきます。

こちらは51分の短めの尺ながら「パニッシャーがどんな人物か」「どのようなトラウマを背負っているか」が端的にわかる内容で、冒頭で警告文が表示されるほどの凄惨なバイオレンス描写も彼の悲しみを際立たせる内容になっていました(殺人および残酷描写が連続するため、もちろんお子様の鑑賞は避けたほうがいいでしょう)。

他にも、Disney+ではドラマシリーズ『パニッシャー』が配信されていますし、ドラマシリーズ『デアデビル:ボーン・アゲイン』にもパニッシャーが登場します。やっぱり「見てほしい」作品が増えてしまうのですが……それほど気負う必要もありません。パニッシャーの活躍が気になった人は、こちらも後追いで見てみればいいでしょう。

また、怒ると緑の怪物に変身するヒーローの「ハルク(本名;ブルース・バナー)」も本作に登場します。彼のことも知らなくても問題はないですが、2012年の映画『アベンジャーズ』などでその活躍を後追いで観てみてもいいでしょう。

さらに、『サンダーボルツ*』も見ておくといいこともあるのですが……その理由はここでは秘密にしておきましょう。「このキャラがこんな感じで登場するの?」という面白さは、そちらを事前に見ておけば、より倍増するはずです。
それでもなお、この『ブランド・ニュー・デイ』が「関連作品を知らなくても大丈夫」と思えるのは、単体で物語がしっかり完結していること、何より素晴らしい作品だと思えたからです。ここからは、冒頭で掲げたように、「史上もっとも優しいヒーロー映画」になった理由を解説していきましょう。
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