ヒナタカの雑食系映画論 第230回

映画『マジカル・シークレット・ツアー』はどこまでが実話? 主婦役に「有村架純以外は考えていなかった」理由

映画『マジカル・シークレット・ツアー』はどこまでが実話なのか、有村架純・黒木華・南沙良の3者がハマり役である理由も含めて解説しましょう。(画像出典:(C)2026「マジカル・シークレット・ツアー」製作委員会)

まるで「魔法のような」タイトルの意味は

犯罪への「NO」を突きつける内容ながら、天野監督はシスターフッド(女性たちの連帯を示す言葉)としての物語を重視したとも語っています。
マジカル映画
(C)2026「マジカル・シークレット・ツアー」製作委員会
「生きづらさを抱えた主婦たちが連帯して密輸を行い、仲間を得て、今までになかった楽しさを感じていく物語にしたい」という監督の想いは、「マジカル・シークレット・ツアー」というタイトルと、そこに込められた「たとえ犯罪であり、最後は儚く散ってしまったとしても、彼女たちにとっては人生のその一瞬だけが魔法みたいな時間だった」というエモーショナルなメッセージにも表れています。

しかも、映画は有村架純が演じる和歌子の「あの旅が私を変えた。人生は自分で作るものだと知って、生きることに夢中になった。めくるめくあの時間が、ずっと続いてほしかった」というモノローグで幕を開けます。そのきらびやかにも思えた時間が、終盤との「落差」をより際立たせる効果を生んでいる、とも言えるでしょう。

「想像」は犯罪の抑止につながるのかもしれない

天野監督は、本作について「もちろん犯罪は許されません。けれど罪を犯した人を『悪』と断じるだけではなく、その背景にはどんな事情があったのだろう?と考えてみることこそが、実は大切ではないかと思います」とも語っています。

確かに、その想像こそが、「無意識の決めつけや思い込み」をしないために必要であり、もっと言えば身近な人が犯罪に手を出すことを止めるための、1つの抑止力にもなり得ると思えます。

劇中で有村架純演じる和歌子は、「自身の本当の気持ちを言えないのに流され続けてしまう」からこそ、母親から「何よそのヘッタクソなうそは」「トロいのに妙にちゃっかりして」など勝手に決めつけられており、そのことが彼女を犯罪に走らせてしまった、とも明確に描かれてもいます。

それをもって、現実に犯罪に手を染めてしまう(かもしれない)人に「何ができた(できる)だろうか?」とも想像することこそに、本作の意義があると言えるでしょう。

天野監督の2020年公開作『ミセス・ノイズィ』でも、かつて「騒音おばさん」として揶揄(やゆ)された奈良県での実際の出来事が着想元になっていました。
そちらもまた実際の事件を安易に扱ったりはしていない、「無意識の決めつけや思い込み」についての痛烈かつ真摯(しんし)な批評性のある傑作でした。ぜひ、『マジカル・シークレット・ツアー』と併せて、見てみてほしいです。
ヒナタカ
この記事の執筆者: ヒナタカ
映画 ガイド
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。 ...続きを読む
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