監督の実体験が反映されていた
結論から申し上げれば、本作の物語やキャラクターのほとんどはフィクションです。しかし、後述する通り「監督の実体験」が一部に反映されていたりもするのです。そして、特異な事件に限らない「無意識の決めつけや思い込み」の普遍的な寓話(教訓を与える物語)になっていることこそが、真に重要な作品であると思えました
れっきとした犯罪を描いている、後述するような「生々しさ」が多分にある作品ながら、なぜ『マジカル・シークレット・ツアー』というきらびやかなタイトルが付けられているのか。その理由も含めて解説しましょう。
実際の事件との明確な違いは?
まず、実際の2017年に起こった事件のあらましを記しておきましょう。40代から70代の主婦やパートの女性5人が、約30キロ、金額にして1億3000万円相当の金塊を密輸入したとして、中部国際空港で逮捕されました。彼女たちは金塊を下着に縫い付けられたポケットの内側に隠すなどの手口で、約1000万円の税金の支払いを逃れようとしていました。主犯格の女性は他の4人を誘う「中心的な役割」を担っており、裁判官からは「組織的・職業的犯行」であると指摘されていました。
実際の事件では逮捕者は5人でしたが、今回の映画ではメインキャラクターを3人に絞っています。また、実際の事件での密輸入元は韓国でしたが、映画では「2017年当時の日本への金の密輸のほとんどがシンガポールと香港だった」という理由でシンガポールを舞台とし、実際にロケ撮影も行われました。
その言葉通り、劇中のキャラクターそれぞれの描写、特に金の密輸に向かうまでの心理は天野監督の想像(空想)によるものですが、「実際もこうだったのかも」と思えるほど、リアルかつ生々しく描かれていたりもします。



