世界を知れば日本が見える 第34回

日本にも飛び火、イスラエルとハマスの「サイバー攻撃合戦」で何が起きているのか

イスラエルとハマスの紛争は、サイバー空間にも拡大している。あまり知られていないが、日本も攻撃対象になっている。具体的にどのような手口なのだろうか。

ロシア拠点のサイバー犯罪集団も参戦

こうした組織以外にも、普段はロシア圏を拠点に活動しているとされるサイバー犯罪集団も参戦している。

ロシアによるウクライナ侵攻で日本政府がウクライナ支持を表明したことに反発して日本にもサイバー攻撃を仕掛けたこともある「KillNet」や、普段は日本企業などに身代金を要求するサイバー犯罪行為を行う「RansomedVC」なども、イスラエルに対してDDoS攻撃やWebサイト改ざんに乗り出した。

そのほか、国民の85%がイスラム教徒であるバングラデシュのハクティビスト集団と見られる「Mysterious Team Bangladesh」は、イスラエルやイスラエル支持を表明している欧州諸国に対する攻撃を実施している。

イスラエルを支持する組織も不正アクセスを実行

逆に反イスラエル組織と比べると圧倒的に数で劣るイスラエルを支持する組織には、例えば、親イスラエルのグループ「RedEvils」がある。非常にハッキング能力の高いRedREvilsは、190万人以上の登録者がいるガザの人気Telegramチャンネル「Gaza Now」に不正アクセスし、チャンネル内にあった11月はじめまでの全てメッセージを削除した。
Telegramイメージ(画像出典:DANIEL CONSTANTE / Shutterstock.com)
Telegramイメージ(画像出典:DANIEL CONSTANTE / Shutterstock.com)
さらに「RedEvils」は、ハマスを支援しているとされるイランや、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラも攻撃している。イランでは、石油関連施設のシステムに侵害して内部情報を公開し、メッセージアプリのアカウントを遠隔操作で削除するような工作も行う。

また親イスラエルであるインドのハクティビストグループ「Team UCC」が、国際連合世界食糧計画(WFP)のパレスチナ人を支援するための寄付サイトへサイバー攻撃を仕掛けたと主張している。このグループはイスラエルを支持する一環として、国民の88%がイスラム教徒であるインドネシアのWebサイトへサイバー攻撃をしている。

このように、サイバー空間上では、イスラエルとハマス側に分かれてサイバー攻撃合戦が繰り広げられている。そして、そうした攻撃は日本にも飛び火している。
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日本で起きた被害は
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