大人であれば毎日関わる「仕事」についての映画は、自分の経験や今後に照らし合わせること、「自分のための映画」のように感じられることも多いと思うのです。
2023年10月20日より劇場公開中のアニメ映画『北極百貨店のコンシェルジュさん』も、新人のお姉さんが頑張る姿を応援できる王道のお仕事映画でした。さらに、ここでは2023年と2022年に公開作に絞って、大推薦したい「お仕事映画」の名作を6作品紹介しましょう。
1:『駒田蒸留所へようこそ』(11月10日より劇場公開)
テレビアニメ『花咲くいろは』『SHIROBAKO』(TOKYO MXほか)などの制作会社P.A.WORKSによる”お仕事シリーズ”の最新作かつ、原作のないオリジナルアニメ映画です。世界で注目されるジャパニーズウイスキーをつくる蒸留所を舞台にしており、その普段の仕事の過程やノウハウを面白く見られるでしょう。2:『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』(11月3日より劇場公開中)
元「SDN48」のメンバーである大木亜希子が自身の体験に基づいて執筆した同名小説の映画化作品で、つまりは「実話もの」。主人公は毎日が充実していると「自分に言い聞かせて」いたものの、駅で急に動けなくなり、会社を辞め、彼氏もおらず、手残り残高は10万円と散々な状態に。そんな時、友人から都内の一軒家で1人暮らしをする56歳のサラリーマンとの同居生活を提案されるのです。この56歳のおじさんが、とにかく穏やかかつ干渉しすぎない、かと思えばちょっぴり前向きになれるアドバイスもしてくれるいい人で、誰もが「自分も一緒に暮らしてみたい!」と思うのではないでしょうか。行きすぎた言動には「今のは良くなかったよ」といさめてくれますし、もう「若くないですから」という自虐的な物言いに対しても「自分のことを必要以上に年寄りだと思わない方がいいよ」と言ってくれたりもするのです。
そして、フリーランスのライターの仕事を始める主人公の苦悩はコミカルに描かれるものの、同時に胸が痛くなる場面もあります。「ひと記事1000円」という価格破壊っぷりへの文句や、梱包のバイトを始めて複雑な心境になる様も共感してしまいますし、絶妙なタイミングで放たれる「少しだけ呪われろ」という言葉には笑ってしまうもいい意味で切ない気持ちになるでしょう。
そんな世知辛さが描かれつつも、主人公が人生や仕事に向き合い続ける姿勢を追えば「どこかでいいことはきっとあるかもしれない」と、やはりちょっとだけ元気がもらえる内容だとも思うのです。「般若の顔」を含む喜怒哀楽を豊かに表現した深川麻衣と、もはや聖人君子のようないい人かつクセの強さもそれなりに感じさせる井浦新の掛け合いをずっと見ていたくもなるはずです。
3:『映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』(11月3日より劇場公開中)
人気キャラクター「すみっコぐらし」の劇場アニメの第3作にして、その最高傑作の声が多く届いている作品です。つぎはぎだらけの古い工場にやってきたすみっコたちがおもちゃ作りをスタートし、やがて工場のとある秘密が明かされていくのです。
すみっコたちが「それぞれの得意なこと」を生かして仕事をする様がいじらしくてほほ笑ましいのですが……そのうちに工場が行きすぎた「成果主義」を目指してしまい、楽しいはずの仕事場がブラックに突き進んでいるような、不穏な空気が漂い出すのも大きな特徴です。
そして、ネタバレ厳禁のさらなる展開を持ってして、資本主義の世の中で働いてきた大人こそが「仕事で1番うれしいこと、大切なことって何だったっけ」と、を改めて考えられるという構造も備えていました。
あっと驚くアクションや緊張感のあるサスペンスも展開するので、小さなお子さんでも飽きずに楽しめるでしょう。まるで映画『トイ・ストーリー』や『バービー』に通ずる「おもちゃ」や「ものづくり」の意義そのものも思い知らされるので、そちらが好きな人にも大推薦です。