夏休みの宿題は、自分が決めたテーマを仮説検証する1人探究
階段には、たくさんの模造紙が貼られていましたが、これはサマープロジェクトという夏休みの1人探究(いわゆる夏休みの自由研究のようなもの)のプレゼンテーション用ポスターです。子どもたちは、自分で決めたテーマについて、仮説を立て、検証をし、その成果を1枚のポスターにまとめて、休み明けに全員がプレゼンテーションをします。
眺めていると、「イカスミパスタはあるのに、どうしてタコスミパスタはないのか」「日焼けする人は、蚊に刺されやすいか」という疑問から理科的探究をしたもの、「大人のちょっとと私のちょっとは違う」というテーマでは、「ちょっと」という言葉の持つさまざまな意味を、家族が使った頻度と事例を分類して検証していました。また、自分が熱中しているスポーツや趣味をテーマにしたものなど、1人として同じものはありません。
ちまたでは、夏休みの自由研究が子どもの負担だからやめたという話を聞きますが、本来は、通常の授業ではできない自分のやりたいことを探究できて、学びの楽しさを味わえるチャンスのはずです。
このポスターを見て子どもたちの興味の幅の広さに驚くと同時に、好奇心から始まる探究のエネルギーがあふれているのを感じました。
自由な学校、TCSで受け継がれている文化
午後のテーマ学習の時間が終わると、子どもたちは2階のフロアに集まって、いつもはクラスごとに行う「振り返りの時間」を、この日は全員で行っていました。朝の会では、スタッフが持ち回りでテーマを決めて対話をしたり、古典の文章を音読したりするそうですが、振り返りの時間は、今日1日をどう過ごしたのかを振り返る時間です。
取材した日は、気付いたことなどを話したり、今後の行事についてすでに体験をしている学年の子どもが、その経験について下級生に向けて紹介したりしていました。
最後は、当番の子が、全員が姿勢を正すまでじっと待ち、全員が静かに落ち着いたのを見計らって終わりのあいさつをして終了です。
授業では特に、きちんとした姿勢で聞きなさいという指示はなく、子どもたちは思い思いの自由な姿勢で学習していますが、朝と帰りのあいさつの時には、きちんと背筋を伸ばし正しい姿勢をとる。これはTCSの文化として子どもたちに受け継がれているのだそうです。
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