親も学び続ける人のコミュニティの一員になれる
保護者にも話を聞きました。今年6年生のお子さんを持つYさんは、このスクールの魅力を次のように話してくれました。「学び続ける人のコミュニティに、子どもだけでなく家族で一緒に入れたこと。親もコミュニティの中で一緒に育ててもらえました。
人が集まれば必ず問題は起きますが、それをトラブルと思うか、挑戦と思うかで結果は全く違います。スクール側の対応が一貫していて、課題に対して前向きに対応してくださるので、こちらも『じゃあどうする?』と考える癖が付き、失敗を恐れず挑戦するレジリエンスの力が育ちました。
またスクールの理念はぶれませんが、手段にはちゅうちょがないので、変化は大きいです。その変化を一緒に楽しめる人には向いている学校です。反対に、子どもを預ける場所、消費者マインドでいる人にはおすすめできません。
娘は、とにかく体力を付けてもらったし、頭を使っている。子どもらしく自律しているように見えるし、何より学ぶことは楽しいことだと思い込んでいるのがありがたいなと思います」
自由だから育つ、「自分で決める」というマインド
実際、このスクールの卒業生のその後を聞くと、進路は本当にさまざまだけれど、自分で決めるマインドが育っていると言います。例えば、ある卒業生は、中高一貫の進学校に進んだものの、高専に転校し、その後大学で音楽を専攻しているとか。一見迷走しているように見えるかもしれませんが、きっと全てに理由があり、つながっているのでしょう。
変化の時代には、キャリアも偶然の要素によって8割が左右されるといわれており、「偶然に対してポジティブなスタンスでいる方がキャリアアップにつながる」というプランドハプンスタンス理論があります。まさにそういうマインドの持ち主に育っているのではいでしょうか。
最後に、堀江理事長は、「公教育を否定しているわけではありませんし、このスクールが全ての人に合うわけではないと思います。ただ、私たちは、多様な学びの場が実現し、それぞれの子どもたちが選べる状況を作りたいと思っています。ですから、参考にしたいという方があれば、オープンにしています」と話してくださいました。
子どもたちが、学びを楽しいものと思って、学び続け、創造し続ける人に育ったら、どんな未来が開けるのでしょうか!
このスクールが20年かけて作り上げてきたプログラムには、これからの学校が目指すべき要素がたくさんあると感じながら、スクールを後にしました。
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この記事の執筆者:中曽根 陽子
数少ないお母さん目線に立つ教育ジャーナリストとして、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。海外の教育視察も行い、偏差値主義の教育からクリエーティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。お母さんが幸せな子育てを探究する学びの場「マザークエスト」も運営している。『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)など著書多数。