AIに負けない子の育て方 第3回

たった1年の受験勉強で最難関中に続々合格! 特色入試で「京大」に受かった“意欲ある子”はどう育ったのか

旅を通して生きる力を育てた結果、子どもが最難関校に最短距離でたどり着くことができたら、最高ですよね。旅育メソッドを提唱する村田和子さんのお子さんは、まさにそんな道を歩んでいます。現在京都大学に通う息子さんが、旅を通して育んだ力とは?

【連載:AIに負けない子の育て方ーVol.3ー】

旅育とは、旅を通して子どもの生きる力を育てることですが、その結果、子どもが最難関校に最短距離でたどり着くことができるとしたら、最高ですよね?

「旅育メソッド」を開発した旅行ジャーナリストの村田和子さんのお子さんは、まさにそんな道を歩んでいます。受験にも主体的に取り組み、第1志望校に見事合格した息子さんが、旅を通して育んだ力とは?

 

1年間の受験準備で最難関校に合格

旅育は受験勉強にも直結する!?
旅育は受験勉強にも直結する!?(画像:村田和子さん提供)

村田さんの1人息子・悠さんは現在、京都大学 総合人間学部の4年生。AIの勉強をしているそうです。

旅行ジャーナリストとして活躍している和子さんの元に生まれた悠さんは、生後4カ月の頃から母と一緒に旅へ出かけました。以来、月に1度は旅に出かけ、9歳で47都道府県を踏破するという子ども時代を過ごしました。

そんな悠さんが中学受験の勉強を始めたのは、小学5年生の3学期。周りも受験する子が多い環境の中で、「自分もチャレンジしてみたい」と思ったのが始まりでした。

そこで、6年生になる直前の2月から、週1回、四谷大塚のテスト&解説コースを受講。あとはオンライン講座で自宅学習という、ほぼ塾なしのユニークな受験スタイルで、見事神奈川県の最難関校の1つ栄光学園に合格。さらに併願校の私立中学と東京学芸大学附属世田谷中学校にも合格しました。

中学受験は、4年生から塾に通って受験勉強をするというのが定番といわれている中、だいぶ遅いスタート。しかもほぼ自宅学習というスタイルにも関わらず、どうして最難関といわれる学校に合格できたのか。そこには、旅で培った力が生かされていたようです。

受験勉強を始めた当初は、下から2番目のクラスでしたが、回を追うごとに成績がアップし、最後は最難関の学校も狙ってみたらと勧められるほど成績が上がっていきました。

旅育で歴史も国語も得意に
旅育は地理や歴史、国語の学習にも役立った(画像:村田和子さん提供)

これについて村田さんは、「小学校とは全く違うレベルの勉強なので、最初は当然できません。できないところからスタートしたので、やればやっただけできるようになり、クラスも上がっていく。また、オンライン講座も子どもの好奇心を刺激する工夫がさまざまにされていて、新しいことを知るのが楽しかったよう。1週間のカリキュラムを一緒に決めたら、あとはモチベーション高く、自主的に受験勉強に取り組んでいた」と言います。

今は、人気の塾の席を確保するために、1年生から塾に通うお子さんもいますが、そういうお子さんの中には、早いスタートで最初は良い成績が取れていたのに、途中から入ってきた友達に追い越され、息切れしてしまうケースがあります。その点、逆にスタートが遅かった分、できなくて当然だし、後は上がっていくだけという環境がプラスに働いたのでしょう。

 

中学受験で求められる力は、旅で培っていた

また、旅で培った力が、想像以上に中学受験の勉強に生かされたと村田さんは言います。

特に社会科の地理や歴史は、その経験が受験勉強と直結しました。なぜなら、社会は暗記科目で、膨大な知識を頭に入れなくてはならないのですが、悠さんの場合、すでに旅を通して実体験で頭に入っていることがあるので、あとはそれを整理していくだけ。

また歴史好きなお父さんの影響で、たくさんの史跡を訪れていたこともあり、歴史上の出来事はリアルな情景を思い浮かべながら頭に入れることができました。

地理の特産物も、実際に訪れた先で食べたものは、すぐに分かる。旅した場所のことが授業で出てくるので、うれしくなってさらに勉強したくなる。そんな好循環が生まれたのです。

理科は旅先での自然体験や、訪れた博物館や科学館での体験が生かされました。国語は旅先で読む観光パンフレットや駅の看板などで漢字を覚えられたので、4年生で6年生レベルの漢字検定に合格していました。

そして算数は、時計の読み方やお釣りの計算も、旅をしながら自然と覚えていたし、お父さんと車のナンバーを見て四則計算をして10にするゲームをするなど、遊び感覚で数字に触れていたので1番得意な科目になりました。

旅での経験は、算数の文章問題でも、情景を思い浮かべ読み解くのに役立ちました。
悠さんは旅育で中学受験にも通じる力を培った
「息子は、遊びと学びの境界線がない」と村田さん(画像:村田和子さん提供)

発達脳科学でも子どもの脳は年齢を追って順番に発達しますが、特に学童期までは、正しい生活リズムと五感を刺激する体験が脳を育てることが分かっています。幼児期から、このように五感をフル活用した体験が悠さんの脳を育てたことは間違いありません。 

「息子は、遊びと学びの境界線がない」と言う村田さん。机上で知識を覚えるのではなく、体験と知識が結びつき、自然に頭に入るという理想的な学び方をしていたおかげで、中学受験のための勉強も、知らないことを知れる喜びの方が勝り、膨大な知識とそれを活用して考える力を必要とする最難関校の問題にも挑戦していくことができたのでしょう。

最近は、中学受験でも大学受験でも、思考力・判断力・表現力が重視され、自分の意見を書かせるものや、資料を読み解いて自分なりに分析をするなど、主体的な学びの姿勢が重視される傾向にあります。そうした力は、机上でいくら知識を覚えても身に付くものでもなく、まさに日頃からの学びに向かう姿勢が試されるのです。

村田さんのお話を伺っていて、まさに旅はそうした力を身に付けるうってつけの機会だと思いました。

 

>次ページ:子どもの主体性を育んだ、村田家の子育て姿勢
 
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