オルタナティブスクールと聞いて、どんな学校か分かりますか?
日本では、オルタナティブスクールは、一般的な公立や私立の学校とは異なる「新たな選択肢の学校」という意味で使われることが多く、近年注目が集まっています。
厳密に言うと、フリースクールもオルタナティブスクールの1つですが、一般的にフリースクールは不登校や引きこもりになった子どもが昼間過ごす居場所の意味合いが強いのに対し、オルタナティブスクールは、一条校(学校教育法第一条に定められた学校の総称)ではない、「もう1つの学校」を指す意味で使われることが多いようです。
あえて一条校にはしない選択をした学校と言ってもいいかもしれません。
今回紹介するHILLOCK(以後ヒロック)初等部もそんな学校の1つです。
東京がキャンパス! 子どもが主役の学校
ヒロック初等部は、東京都世田谷区の砧公園という大きな公園のそばに、2022年4月に産声をあげたばかり。2023年9月に東京都渋谷区の代々木公園のそばに2つ目のスクールが誕生しました。共に、都内有数の広さと環境を誇る公園に隣接していることにお気付きでしょうか。
これは、ヒロック初等部の「ワイルド&アカデミックな環境で、子どもが主役となって『育ち』や『学び』を主体的に勝ちとる、“福利(=well-being)を広げていく学校”」(ヒロック公式Webサイトより)という理念に基づいています。
ヒロックでは、「人は自然の中でこそ育つ」と考え、自然体験が少なくなっている子どもたちに、日常的に自然に触れられる環境を用意したのです。
なので、ヒロックでは、天気の良い日には公園でお弁当を食べたり、学んだり、遊んだりしています。
そして教育起業家の堺谷武志さんの3人が出会い、理想の教育を実現しようと意気投合。ヒロックを立ち上げました。堺谷さんは、主に経営面を担うと同時に、ヒロックプリスクールのスクールディレクターを務めています。
ヒロックは元小学校教師が作るオルタナティブスクールということもあり、設立前から注目されました。多数のメディアで取り上げられているので、目にしたことがある人も多いかもしれません。
この記事では、ヒロックの基本的な考え方と1年半たった今の子どもたちの様子をリポートします。
「いつまでに、〇〇できなければいけない」というルールがない学校
ヒロック初等部の教育は、大きく分けて次の4つから成り立っています。1.自由進度学習
2.テーマ学習(広義SEL※)
3.マイプロジェクト
4.自由の時間:緑豊かな公園で過ごす時間
※SEL=「社会性と情動の学習」と訳されるSocial Emotional Learningのこと。いわゆるIQ(知能指数)だけではなく、EQ(Emotional Intelligence Quotient:心の知能指数)にも焦点を当てた学習の取り組み全般を指します。
基礎的な教科学習は各自の自由進度で進められ、公教育の内容を5割程度の時間で⾏い、残りの5割の時間で、探究や英語、先進的な学びといった応用・発展的な学びを行います。
テーマ学習は、シェルパ(ヒロックでは子どもに寄りそう観点から「先生」とは呼ばず、ヒマラヤ登山ガイドのシェルパにちなんで「ラーニング・シェルパ」と呼びます)が、「どうしてもこれは人生の中で触れてもらいたい」というテーマに関する学習や、イングリッシュティーチャーとバイリンガルのシェルパによるイングリッシュSTEAMクラス、さまざまなプロフェッショナルを招く専門クラスなどもあります。
マイプロジェクトは、子どもたちが自分でテーマを設定して探究する時間。
そして、隣接する公園で過ごす自由の時間もあります。
私が世田谷校に訪問したのは、マイプロジェクトを保護者にプレゼンテーションする前日というタイミングだったので、通常の自由進度学習やテーマ学習のほかに、子どもたちがそれまで取り組んできたマイプロジェクトプレゼンテーションのリハーサルの様子を見ることができました。
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