自分で決めた「めあて」で進める自由進度学習と、共に学び合うテーマ学習
自由進度学習の時間は朝の1時間です。漢字の練習をする子、算数や英語の問題に取り組む子、マイプロジェクトに取り組む子……、子どもたちは「Monoxer(モノグサ)」や「eboard(イーボード)」 というICT教材やサイトを活用して、 自分で決めた学習にそれぞれのスタイルで取り組み、終わりには自分の立てた「めあて」に対してどのくらい進めることができたのかを振り返ります。高学年の子どもたちは、「自律」や「多様性」など大人でも説明するのが簡単でない言葉が書かれたカードを使って、言葉の意味を考えるワークに取り組んでいました。
ただ、「漢字を覚えなさい」ではなく、「そもそもなんで漢字の勉強をするんだろう」と問いを立てることから学びの扉が開き、それが探究の入り口になると蓑手さん。
印象的だったのは、最初は遠くでぼんやり様子をみていた見学に来ていた子どもが、気が付くと皆の輪の中に入って、積極的に授業に参加していたことでした。
興味を持てば、子どもは自ら学びだす、その扉をどう開くかがシェルパの仕事なのでしょう。
グッド&ベターのフィードバックで子どもたちの成長を促す
ランチタイムを挟んで、いよいよマイプロジェクトリハーサルの時間です。本番を意識して、20分ずつプレゼンテーションしていきます。
スライム作り、恐竜、毒を持っている生物、サッカーのキックの仕方、野球のバットの振り方、ことわざ、マイギターの工作などなど、テーマは多種多様。それぞれが興味を持って探究してきたことを披露していました。
そして、スクールタクトという授業支援システムに、感想や気付きを書き込み共有します。
シェルパも講評をしますが、「こういうところがよかったね! ここをもっとこうしたらよくなるんじゃないかな」と、良かったところを伝えた後に、もっと良くなるためにできることを伝えていたのが印象的でした。
ポジティブ心理学には、心理教育を行ったら、ウェルビーイングが高まっただけでなく、学力も上がったというデータがあります。これは、できているところに注目されるとうれしいのはもちろんですが、もっと成長したいという意欲が生まれるからなのかもしれません。
ヒロックでは、子どもたちが望まない競争は一切せず、子どもたちの福利(ウェルビーイング)を拡張するという理念を掲げていますが、グッド&ベターのフィードバックも、子どもたち1人ひとりのウェルビーイングと成長を促す言葉がけと言えるでしょう。
「私自身も、子どもたちの成長を見るのが何よりうれしい」と五木田さん。
子ども同士の会話でも、「こうしたらもっと良くなると思う」というプラスの声かけが多かったのも、そんなシェルパたちの姿を見ているからでしょう。
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