AIに負けない子の育て方 第4回

競争も、テストも、ルールもなし! 元小学校教師が作った「理想の学校」で行われていること

今、一般的な公立や私立の学校とは異なる新たな選択肢として、オルタナティブスクールに注目が集まっています。元小学校教師が作った理想の学校には、学年もテストも競争もありません。一体どんな学校なのでしょう。

自分で決めた「めあて」で進める自由進度学習と、共に学び合うテーマ学習

自由進度学習の時間は朝の1時間です。漢字の練習をする子、算数や英語の問題に取り組む子、マイプロジェクトに取り組む子……、子どもたちは「Monoxer(モノグサ)」や「eboard(イーボード)」 というICT教材やサイトを活用して、 自分で決めた学習にそれぞれのスタイルで取り組み、終わりには自分の立てた「めあて」に対してどのくらい進めることができたのかを振り返ります。
自分で決めた「めあて」で進める自由進度学習
自分で決めた「めあて」で進める自由進度学習
次はテーマ学習の時間。日替わりで「数と論理」「英語」「英語STEAM」などが行われていますが、この日は「思考と言語」に取り組んでいました。
テーマ学習「思考と言語」の授業風景
テーマ学習「思考と言語」の授業風景
低学年の子どもを中心に行われていたのは、漢字について。「そもそも、なんで漢字の勉強をするんだろう? 漢字って本当に必要?」という問いから始まり、漢字がなかった場合に起きることを考えたり、同音異義語を見つけたり、対話しながら、学びを深めていきます。

高学年の子どもたちは、「自律」や「多様性」など大人でも説明するのが簡単でない言葉が書かれたカードを使って、言葉の意味を考えるワークに取り組んでいました。

ただ、「漢字を覚えなさい」ではなく、「そもそもなんで漢字の勉強をするんだろう」と問いを立てることから学びの扉が開き、それが探究の入り口になると蓑手さん。

印象的だったのは、最初は遠くでぼんやり様子をみていた見学に来ていた子どもが、気が付くと皆の輪の中に入って、積極的に授業に参加していたことでした。

興味を持てば、子どもは自ら学びだす、その扉をどう開くかがシェルパの仕事なのでしょう。

グッド&ベターのフィードバックで子どもたちの成長を促す

ランチタイムを挟んで、いよいよマイプロジェクトリハーサルの時間です。
 
本番を意識して、20分ずつプレゼンテーションしていきます。

スライム作り、恐竜、毒を持っている生物、サッカーのキックの仕方、野球のバットの振り方、ことわざ、マイギターの工作などなど、テーマは多種多様。それぞれが興味を持って探究してきたことを披露していました。
自分が興味を持って調べたことを発表!
自分が興味を持って探求したことを発表
プレゼンテーションのやり方も、実演からパワーポイントや動画を使ったものまでさまざま。発表者以外の子どもたちは、各ブースを回りながら友達のプレゼンテーションを聞き、質問をしていました。

そして、スクールタクトという授業支援システムに、感想や気付きを書き込み共有します。
 
シェルパも講評をしますが、「こういうところがよかったね! ここをもっとこうしたらよくなるんじゃないかな」と、良かったところを伝えた後に、もっと良くなるためにできることを伝えていたのが印象的でした。

ポジティブ心理学には、心理教育を行ったら、ウェルビーイングが高まっただけでなく、学力も上がったというデータがあります。これは、できているところに注目されるとうれしいのはもちろんですが、もっと成長したいという意欲が生まれるからなのかもしれません。

ヒロックでは、子どもたちが望まない競争は一切せず、子どもたちの福利(ウェルビーイング)を拡張するという理念を掲げていますが、グッド&ベターのフィードバックも、子どもたち1人ひとりのウェルビーイングと成長を促す言葉がけと言えるでしょう。

「私自身も、子どもたちの成長を見るのが何よりうれしい」と五木田さん。

子ども同士の会話でも、「こうしたらもっと良くなると思う」というプラスの声かけが多かったのも、そんなシェルパたちの姿を見ているからでしょう。


>次ページ:毎日の問い「今日1日、幸せになる力は付きましたか?」
 
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