社内のキャリアパスにも学歴が影響
このような「前例主義人事」のバイアスは、巨大組織になればなるほど強まっていき、社内のキャリアパスにも影響していく。分かりやすいのは、大企業などでよく聞く「出世のモデルコース」だ。
例えば、若手時代は○○部を経験した後、海外赴任を経た後に、本社に戻って管理部門を経て役員へ――みたいなお約束のキャリアパスが決まっていて、同期入社の中でもこれに乗れるのはほんの一握り。そして、そのような「勝ち組」はご多分に漏れず高学歴だったりするのだ。
大企業に勤めている人ならば分かっていただけるだろうが、組織の中で前例がまったくないことを始めるのはかなり難しい。「誰が責任取るの?」「お前の一存でそんなこと決められるわけないだろ」「エビデンスを出せ」など全方向から叩かれて結局「何もしないのが1番安全」となることが多い。
こういう「現状維持型組織」にとって、人事や採用はコテコテの前例主義を採用した方がいいのは言うまでもない。つまり、「これまで出世したような人と似たような人が出世して、これまで採用実績のある大学と似た大学の学生を採用する」というワケだ。
だから、社員に高給を払えるような企業は基本的に「高学歴」を採用して優遇をしてきた。もちろん、その中には「慶應はやっぱり仕事ができる」とか「やはり東大卒は発想が違う」という「人」を見た結果もあるだろう。
ただ、「ミスをしたくない」「責任を取りたくない」という組織人の「保身」が招いた前例踏襲的な人事もまだ多く存在しているのも事実だ。
「Fラン大学」出身者はどうすればいいのか
「じゃあオレみたいなFラン大学出身者は希望ないじゃん。いくら働いても有名大学のやつよりも収入が低いなんて」とやる気を失うフレッシュマンもいるだろうが、そのために「転職」があるし、「起業」もある。
「高学歴ほど高収入」というのはあくまで統計的な話なので、全ての企業がそうとは限らない。このセオリーが当てはまらない実力主義の会社へ転職をすればいいだけの話だ。
また、実力を磨いて起業をするのもいい。組織をイチから自分で作り上げれば、「前例主義」もへったくれもない。東大卒だろうが慶應卒だろうが関係ない、真に実力の世界だ。
フレッシュマンの皆さんにはいろいろな未来がある。1つの組織での「挫折」など気にせず、チャレンジを続けていただきたい。
窪田 順生 プロフィール
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経てノンフィクションライター。また、報道対策アドバイザーとしても、これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行っている。
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