世界を知れば日本が見える 第17回

アメリカIT企業で相次ぐ「レイオフ」と「解雇」は何が違う? 日本で起きる可能性は

ツイッターやグーグルなど、アメリカのIT企業を中心に「レイオフ」が相次いでいるが、解雇との違いは何だろうか。海外の通信社で勤務経験がある筆者が現場での捉え方も含めて解説する。

アメリカの解雇には2種類ある

レイオフと解雇の違いは(画像はイメージ)

アメリカでは解雇にもおおまかに2パターンある。よく聞くレイオフ(一時解雇)と、「You are fired!(お前はクビだ!)」と言われるターミネーション(解雇)だ。
 

レイオフは、事業縮小など会社の都合で仕事を追われることで「一時」解雇という扱いになる。一方で、ターミネーションは従業員の成績が悪かったり仕事ぶりに問題があるなど個人の仕事のパフォーマンスがダメで辞めさせられることだ。
 

現在、アメリカのIT企業で起きているのはほとんどがレイオフである。ただ「一時解雇」とはいっても、大抵の場合、多くの従業員が会社に再雇用されることはない。

 

また最近、カリフォルニア州のシリコンバレー銀行が破綻したニュースが大きく報じられている。過去にあまりないレベルの銀行の破綻ということで、これからさらにアメリカIT界隈の混乱によって失業者が増える可能性もある。しばらくは動向を要チェックである。
 

アメリカでは解雇を言い渡されたら、すぐに段ボール箱に自分の荷物をまとめて、会社から去らなければいけない。ただ退職金のようなものが保証されているケースは多い。例えば、ツイッターでは解雇後も3カ月分の給料を払う約束をしていた。メタの場合は、16週分の基本給と勤続年数に応じた給与が支払われている。
 

もっとも、IT企業が解雇後も支払いを約束しているのは、法律によって失業した人への補償をする決まりがあるからだ。アメリカ連邦法によれば、集団解雇の際には60日以上前に通知することを義務付けている。つまり、解雇した後でその分の支払いを続ければ、従業員を直ちに会社から出て行かせることができる。
 

ただ留意すべきは、アメリカが訴訟大国ということで、会社側の横暴な解雇などは裁判になるリスクもついて回る。失業者側も、むちゃな解雇に対してはすぐに訴えを起こすことができる。


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