2023年3月13日(日本時間)に、第95回アカデミー賞(R)の授賞式が迫っています。
アカデミー賞の影響力の大きさは言うまでもないほど。例えば、第92回で非英語作品で史上初の作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』や、第94回で国際長編映画賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』など、日本でも大きな話題を呼んだことを覚えている人は多いでしょう。
そして、今回のアカデミー賞のノミネート作には、例年にはない面白い特徴がいくつもあります。それを踏まえて、授賞式や対象作品を観ると、アカデミー賞をもっと楽しめるはずです。
助演男優賞が確実視されているのは『グーニーズ』の元子役
今回のアカデミー賞の大本命は、3月3日より劇場公開中の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(以下『エブエブ』)です。何しろ作品賞を含む最多10部門11ノミネート(助演女優賞で2人)を果たしているのですから。その中でも、受賞が確実視されているのは、助演男優賞にノミネートされているキー・ホイ・クァン。彼は『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』や『グーニーズ』に出演した、1980年代に高い人気を得ていた元子役だったのです。
しかしながら、彼はその後「ハリウッドではアジア人にチャンスがない」という現実を目の当たりにします。助監督やアクション振り付けなど映画業界では働いていたものの、俳優として長い不遇の時を過ごしたキー・ホイ・クァンが、演技やアクション(95%は本人がやり遂げたとのこと!)で絶賛を浴び、アカデミー賞の大舞台に立つということそのものが、感動的な物語になっているのです。
口コミで大ヒット『RRR』のダンスの生パフォーマンスも!
最多ノミネートの『エブエブ』が注目される理由は他にもあります。それは、劇中の家族が中国系移民であり、前述したキー・ホイ・クァンをはじめ、アジア人がキャスティングされていること。そして、数々のアクション映画で支持をされてきたミシェル・ヨーが主演女優賞に、ステファニー・スーが助演女優賞にノミネートされているのです。アジア人俳優がアメリカ映画で複数のメインキャラクターを演じ、かつアカデミー賞にそろってノミネートされること自体、とても珍しいこと。実は、他の映画も含め国際色が豊かであることも、今回のアカデミー賞の特徴の1つです。
例えば、8部門9ノミネートされている『イニシェリン島の精霊』はアイルランドが舞台であり、コリン・ファレル、ブレンダン・グリーソン、バリー・コーガン、ケリー・コンドンというノミネート俳優それぞれがアイルランドの出身です。
絶賛に次ぐ絶賛の口コミで、日本でもロングランヒット中のインド映画『RRR』は、歌曲賞にノミネートされました。授賞式では『ナートゥ・ナートゥ』の生パフォーマンスが決定しています。
国際長編映画賞ノミネート作に限らず、こうして多様な国の作品が授賞式で観られるのも、うれしいですね。
>次のページ:272キロの男性を演じた「あの俳優」も受賞確実視!
【おすすめ記事】
・映画『BLUE GIANT』は何がすごいのか。高級ジャズクラブのような臨場感に冒頭から感動必至
・新作映画『鬼滅の刃』は“衝撃の連続”な2時間だった! 既出エピソードでも映画館で見るべき理由
・LGBTQ+を描く日本映画の「現在地」。“まだここ”と感じる描写から「大げさではない表現」に向かうまで
・いい意味で“居心地が悪くなる”名作? 「有害な男性性」を描いた映画作品を振り返る
・『第95回アカデミー賞』授賞式直前! 「受賞予想」と「授賞式の楽しみ方」を映画ライターが徹底解説