ヒナタカの雑食系映画論 第16回

2023年のアカデミー賞が「特に面白い」理由。『エブエブ』だけじゃない、国際色豊かな顔ぶれに期待!

2023年3月13日(日本時間)に迫る第95回アカデミー賞(R)の授賞式。ここでは、今回のノミネート作品にいかなる特徴があるのか、どのようなところに面白さがあるのか、たっぷりと紹介してみましょう。

『ハムナプトラ』の主演俳優が272キロの巨体の男となって復活

キー・ホイ・クァンの他にも、ノミネートされていること自体が感動的であり、受賞が確実視されている俳優がもう1人います。それは、『ザ・ホエール』で主演男優賞にノミネートされている、ブレンダン・フレイザーです。
 

出演作で有名なのは、1999年から続く娯楽映画『ハムナプトラ』シリーズ。しかし、その後のブレンダン・フレイザーは体調の悪化や、結婚生活の破綻、そしてセクシュアルハラスメントを受け、うつ状態になったことなど、さまざまな要因でハリウッドの表舞台から遠ざかっていたのです。

そのブレンダン・フレイザーが『ザ・ホエール』で演じたのは、272キロの巨体の男。毎回4時間にも及ぶ特殊メイクが施され、『ハムナプトラ』のあのヒーローと同じ人だとはとても思えないほどの変貌ぶりです。メイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされていることにも大いに納得できるでしょう。
 

ブレンダン・フレイザーは劇中で、健康面で余命わずかなほどに危機的な状態、かつ精神的にも極限にいる人物を、鬼気迫る演技で表現しています。それは言うまでもなく、痛ましくつらい経験をしたブレンダン・フレイザー本人とも重なる姿。こちらの感情までをも良い意味でぐちゃぐちゃにさせてくるような終盤の表情は、忘れることができません。

なお、この『ザ・ホエール』で助演女優賞にノミネートされているホン・チャウはベトナム人であり、やはりアジア人の活躍と評価の高さがうれしくなります。

さらに余談ですが、ブレンダン・フレイザーと、『エブエブ』のキー・ホイ・クァンという、1992年公開の『原始のマン』で共演経験のある2人がそろって受賞する可能性も考えられます。こうした“縁”、ほとんど“奇跡”のようなことが起こるかもしれないということも、アカデミー賞の面白いところです。
 

>次のページ:良い意味で「汚い『ラ・ラ・ランド』」なノミネート作品って?

 
Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

連載バックナンバー

Pick up

注目の連載

  • 恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」

    東海道新幹線の「個室」が100系以来、四半世紀ぶりに復活! 「どこに設けられる?」JR東海に聞いた

  • ヒナタカの雑食系映画論

    見事なバランスに仕上がった『シンデレラ』を筆頭に、ディズニー実写映画の「ポリコレ」について考える

  • AIに負けない子の育て方

    多様化する中学受験…実施校が爆増した「新タイプ入試」「英語入試」に受かるのはどんな子か

  • 海外から眺めてみたら! 不思議大国ジャパン

    日本人には日常すぎて衝撃! 外国人が「最高に素晴らしい!」と称賛する日本のいいところ厳選3