事前知識は、簡単なあらすじと「ゼウスの掟」だけでもOK
クリストファー・ノーラン監督作品は『TENET テネット』のように複雑なSF設定を持ち込んでいたり、はたまた『オッペンハイマー』のように史実を知っていることを前提とした物語運びがあったりと、「予備知識が必要」なイメージもあるでしょう。 しかし、今回の『オデュッセイア』はそれほど心配はいらない、もっと言えば予備知識がほとんどなくても大丈夫です。例えば、あらすじは以下の2つのシンプルな軸さえ分かっておけば、大きな混乱はないでしょう。(1)トロイア戦争を終えた王様のオデュッセウスが、20年ぶりの帰郷を目指す
(2)故郷では息子のテレマコスと、妻のペネロペが窮地に立たされている
ゼウスの掟とは、古代ギリシャで重視されていた「身分によらず客人は等しくもてなす」というルール。『オデュッセイア』公式Xでは「ホスト:客人が満たされるまで名前を聞いてはならない」「ゲスト:ホストに対して非礼を働いてはならない」「相手によって態度を変えず互いに敬意を払う道徳観が、劇中の展開でも重要な鍵を握ります」とも記されています。 さらに、本作の字幕監修・吹替監修をした古代ギリシャ研究家の藤村シシンのXに記された解説も参照するといいでしょう。ゼウスの掟が「(警察もいない時代で)旅人が生きて帰るための唯一の保障システム」だったという文言も、念頭に置いて見てもいいかもしれません。 何より、王様のオデュッセウスが20年ぶりの帰郷を目指すという過程において、思いもよらぬ事態や危機また危機の連続で、シンプルにエンタメ性が高い内容でもあるのです。
原作はもとよりギリシャ神話に詳しくないという方のほうが、むしろ「えっ?そんなことになるの?」な驚きや意外性を楽しめるかもしれません。
4DXは「羽織れる上着」の持参を推奨?
前置きがすっかり長くなりましたが、ここから本題の4DXについて記します。本編では「航海(嵐に襲われる)シーン」がいくつかあり、その時に確かに4DXでは座席の揺れ以外にも激しい要素はあるのですが……それでも約3時間の上映時間からすればごく一部なので、苦行というほどに疲れることはまずないはずです。
そもそも全体的にはドラマパートも多めで、ずっと座席が揺れ動いているわけではありません。それでいて「ここぞ」という時のスペクタクルシーンでは、各演出がしっかり“仕事”をしています。だからこそ「やりすぎないバランスのアトラクション」になっていたと思うのです。
それでいて、4DXの製作スタッフは実際に船に乗って再現を試みたそうで、座席の揺れはなるほど“リアル”そのもの。乗り物酔いをしやすい人は、ある程度の覚悟をしておいたほうがいいかもしれません。 注意点としては、わずかながらも「水がかかる」という演出があるので、秋口にさしかかり肌寒くなってきた今の時期は特に、「羽織れる上着」を持っていったほうがいいでしょう。なお、「前から吹き付ける水」に関しては、座席横のスイッチでON/OFFの切り替えが可能です。
また、さまざまな演出が楽しめる上映方式には「4DX」と「MX4D」がありますが、座席の動きがメインの演出である今回の『オデュッセイア』では、究極的にはどちらでもいいかもしれません。しかし、「4DX」にだけある「上から雨(水滴)が少し降る」水の演出も効果的ではあったので、ぜひ今回も4DXをおすすめします。
そして、4DXでは多くの場合で吹替版となるのですが、こちらが素晴らしい出来栄えでした。平田広明、榎木淳弥、坂本真綾、江口拓也、水樹奈々、白石涼子、本田貴子、内田雄馬、坂詰貴之、武内駿輔と超一流の声優陣が集結しており、それぞれが熱演した各キャラクターが親しみやすく映りましたし、前述した「ゼウスの掟」にまつわる言動の意味も、より情報量が多くダイレクトに伝わってくる印象がありました。 さて、ここからは具体的な優れた4DXの演出を、3つのポイントに分けて紹介しましょう。サプライズとも言える一部の展開にも触れているので、知りたくない人は先に劇場へ足を運ぶことをおすすめします。



