ヒナタカの雑食系映画論 第81回

『オッペンハイマー』を見る前に知ってほしい6つのこと。2つの用語、時系列、モノクロシーンの意味は?

『オッペンハイマー』を見る前に知ってほしい6つのことを解説しましょう。映画館で見るべき理由や、最低限理解しておくべき用語と時代背景もあるのです。(※画像出典:(C) Universal Pictures. All Rights Reserved.)

オッペンハイマー
『オッペンハイマー』3月29日(金)、全国ロードショー IMAX(R)劇場 全国50館 同時公開 配給:ビターズ・エンド ユニバーサル映画 (C) Universal Pictures. All Rights Reserved.
2024年3月29日より映画『オッペンハイマー』が劇場公開されます。

本作は「原爆の父」と呼ばれる理論物理学者ロバート・オッペンハイマーの生涯を描いた伝記映画。本国アメリカでは2023年7月に『バービー』と同日公開ながら歴史的な大ヒットを記録し、日本公開はそれから約8カ月が過ぎてからの、やっとの上映となります。

そして、第96回アカデミー賞で13部門にノミネートされ、作品賞、主演男優賞、助演男優賞、監督賞、作曲賞、撮影賞、編集賞の最多7部門を受賞。あらゆる方面で称賛されることが納得できる、堂々たる傑作だと断言します。

『オッペンハイマー』を深く堪能するために知っておきたいこと


もちろん、日本人にとってはセンシティブな題材であり、後述する特徴もあいまってある程度の賛否両論も呼ぶでしょうが、それも含めて議論することにも価値があります。

そんな『オッペンハイマー』は、何も知らずに見ても映像作品としてのクオリティに圧倒されるでしょう。しかし、間違いなくある程度の予備知識があったほうが楽しめる内容です。

大筋は「原爆を誕生させた男の苦悩を描く」とシンプルですが、登場人物が非常に多く、時系列がシャッフルする構成もかなりにテクニカル。さらには、当時の時代背景を知っておいたほうがいいのです。
オッペンハイマー
(C) Universal Pictures. All Rights Reserved.
例えば、マット・デイモン演じるアメリカ陸軍工兵隊の将校レズリー・グローヴスは、政府の極秘プロジェクト「マンハッタン計画」を指揮し、オッペンハイマーに白羽の矢を立てた重要人物。それ以外でも、公式Webサイトなどで紹介されているキャラクターを、ざっくりとでいいので把握しておくといいでしょう。

ここからは、『オッペンハイマー』を見る前に知ってほしい最低限の情報と知識を、さらに項目ごとに分けて紹介しましょう。

1:映画館で見るべき理由がこれだけある

鑑賞前の「心構え」として必要なのは、上映時間が3時間の大作なので鑑賞直前のトイレは必須ということ。その3時間のうち、さまざまな思惑が交錯する会話劇が多くを占め、さらに驚異的な映像が目の前に飛び込んできます。「どっしりと腰を据えて」見てほしい作品なのです。

もちろん、アカデミー賞で作曲賞、撮影賞、編集賞を受賞することも大納得の、それら全てが「集中して映画館の大スクリーンで見る」ことを前提とした作りで、それでこそ天才科学者の苦悩を「体感」させる映画にもなっています。
オッペンハイマー
(C) Universal Pictures. All Rights Reserved.
つまり、『オッペンハイマー』は映画館での鑑賞はほぼマスト。後から配信で見て、家の環境では3時間も集中力が持たなかった、作品内世界に没入できなかったというのはあまりにもったいないです。

クリストファー・ノーラン監督は『TENET テネット』(2020年)でも、コロナ禍で延期を重ねても「映画館での上映」にこだわり続けており、そこには作り手の執念が詰まっています。その「全力」ぶりは、劇場で真正面から受け取るべきでしょう。

また、『オッペンハイマー』はR15+指定作品であり中学生以下はそもそも見られないことにもご注意を。理由は「刺激の強い性愛描写」であり、確かに直接的に描くことの必要性があるのですが、人によってはかなりギョッとしてしまうのも事実。家で家族が目にしてしまうのははばかれることもまた、映画館で見てほしい理由です。

さらに、公式Webサイトでは「ご鑑賞にあたってのご注意」として、「本作には、核実験のシーンおよび、原子爆弾投下による被害を想起させる描写がございます」と記されています。こちらもやはりショッキングですが、その深く嘆き悲しみたくなるほどの描写も、やはり必要と思えるものでした。

2:どの上映形態を選べばいい?

さまざまな上映形態が用意されている『オッペンハイマー』ですが、結論からいえば、全国2カ所しかない「IMAXレーザー/GTテクノロジー」での上映で見るのが最もおすすめです。池袋グランドシネマサンシャインと109シネマズ大阪エキスポシティでの同上映形態でのみ、一部シーンで画面が上下に大きく広がり、さらなる没入感を味わえるのですから。
 

とはいえ、場所の関係で見に行けない、すでに満席で埋まっていたのであれば、通常の上映環境でも十分だと思います。IMAXでの「画面の大きさがシーンによって切り替わる」のが苦手というのであれば、通常の上映のほうがいいでしょう。

また、別のIMAXシアターでも一部シーンで画面は上下に少し広がりますし、最上級の音響や美麗な映像は楽しめます。「黒」が映える映像と迫力の音響が用意された「ドルビーシネマ」も候補でしょう。
 

ちなみに、本作のためだけに開発された65ミリカメラ用モノクロフィルムを用いており、史上初となるIMAXのモノクロ&アナログ撮影を実現した作品でもあります。後述するモノクロのパートでも(それ以外でも)洗練された画の数々を堪能できるでしょう。
 

さらに、アカデミー賞の音響賞は5月24日公開の『関心領域』が受賞しましたが、この『オッペンハイマー』の音響も受賞が最有力視されていたすさまじいクオリティです。通常の上映でも十分とはいえ、やはりより良い音響を体感できる、ラージフォーマットでの鑑賞料金を上乗せする価値が大いにあります。

さて、ここからは一部内容に触れつつ、最低限の範囲で知ってほしい、当時の時代背景や用語を解説していきましょう。
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最低限知っておくべき用語は?
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