※本記事で紹介している商品の購入やサービスの利用により、売上の一部がオールアバウトに還元されることがあります。
加害者側の心理を知る意義
さらに、第4話では“盗撮犯”へのセラピーにも踏み込みます。れっきとした性犯罪者かつ加害者側の心理が描かれているため、これまで以上に理解できないどころか、憎悪に近い嫌悪感を覚える人は間違いなくいるでしょう。しかし、その「なぜ盗撮をやめられない心理になってしまうのか」を知ることにもまた意義がありますし、加害者側の“罪の重さ”もはっきりと示しています。それは「嫌悪感を持ってしまったとしても、知っておいたほうがいい」ことだと思えたのです。
センシティブな題材に真正面から取り組む姿勢が伝わるのはもちろん、性犯罪への重要な視点を提供してくれることこそ、性犯罪の加害者側になる可能性がある男性に見てほしい最大の理由でした。
“社会全体”で性の問題に踏み込む気概も
そして、基本的に1話完結の話が続いているようで、実はシリーズ全体を貫く大きな物語もあります。それは“犀川先生の過去のトラウマ”と“人気アナウンサーである市之瀬佑美(新木優子)との恋愛関係”です。その市之瀬アナウンサーは「恋愛や性のプライバシーをマスコミが悪事を働いたかのように語るのはおかしい」「性を売り物にしたり性被害に遭う負の側面」などの“社会全体で取り組むべき”問題意識を口にしていながらも、“キャッチーさ”が求められる番組とはなかなか折り合いがつかないのですが……彼女は大きな出来事を経て、犀川先生と共にとある“挑戦”をすることになります。

前述した霜鳥先生の問診が作品のスタンスと一致しているように、市之瀬アナウンサーの「(要求されたことだとしても)性の話題をキャッチーに視聴者に提供しようとする」「しかし切実な性の問題には真剣に向き合い問い続ける」という姿勢もまた、この『SとX』という作品を象徴しているように思えました。
そして犀川先生の“性に関わる重大なトラウマ”が明かされた後に告げられるメッセージは、これまで語られた「セックスに悩んでない人なんていませんから」という言葉および、さまざまな性の悩みのエピソードの積み重ねがあってこその説得力がありました。だからこそ、“誰もが無縁ではない問題”ともわかりますし、そのメッセージが福音になる人もきっといるでしょう。
中島健人は“チューニングの天才”
最後に、プレス資料掲載の草野翔吾監督のオフィシャルインタビューから、主演の中島健人への印象を引用しておきましょう。他にも、中島健人はセラピストの目線の動かし方や相槌をうつタイミングなどをかなり研究していたそうです。しかも、“ファミリーデイ”(スタッフ、キャストの家族を撮影現場に呼ぶ日)では、真夏の灼熱のアスファルトの上で、スタッフの小さな娘さんに膝をつけて優しく話しかける姿を見せて、草野監督が「ケンティーは本当に本物の王子様なんだ!」と感激したこともあったのだとか。ストイックでプロフェッショナル。今回ご一緒して分かったんですが、彼は本当に裏表がなくずっとアイドルであり王子様であり、要はパーフェクトな人なんです。初めてお会いしたのは衣装合わせの日で、2階建てのプレハブのような場所だったんですが、鉄の外階段を上がって来るカンカン!という足音がもうかっこよかったんですよ(笑)。
でもそのかっこよさがお芝居をするうえでは、ある種のハンデになるときもあって。何をしてもかっこよくなってしまうので、特に撮影の最初の頃は「今のはちょっとかっこよすぎましたね」という理由でリテイクになることも多かった。そういう時も中島さんは嫌な顔ひとつせず「あ~かっこよすぎたか!ちょっと考えてみます」と笑いながら、チューニングの作業をしていく。そして次はバチン!と役に合わせてくるんですよ。
彼は“チューニングの天才”だと思う。求められるものと自分の表現したいことの一番最適な接点を、求められているもの以上にチューニングして返すことのできる人なんだなというのが、僕の中島さんの印象です。
先ほどはケンティーという超イケメン王子様が…という下世話な言い回しをしてしまいましたが、この『SとX』では確かに“カッコ良すぎない”中島健人になっている、そういう演技のチューニングをしているからこそ、「この人なら安心して性の悩みを話せる」霜鳥先生というキャラクターを体現していたと思えるのです。
それでいて、やはりナチュラル王子様の中島健人だからこその魅力もしっかり伝わる(特に第2話の推し活のエピソードでのとある姿で!)のも本作の大きな美点。ぜひぜひ、ケンティーの魅力も含めて、最終話まで楽しんでください。
この記事の執筆者:
ヒナタカ
映画 ガイド
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
...続きを読む



