ヒナタカの雑食系映画論 第174回

映画『国宝』だけじゃない。『ババンババンバンバンパイア』との共通点とギャップで分かる、吉沢亮の凄み

映画『ババンババンバンバンパイア』の2つの注意点と、5つの魅力をまとめて紹介しましょう! 主演の吉沢亮の凄さを、『国宝』との「ギャップ」と「共通点」で再確認できた理由もありました。(※画像出典:(C)2025「ババンババンバンバンパイア」製作委員会 (C)奥嶋ひろまさ(秋田書店)2022)

魅力1:「ブラッディラブコメ」と「ボーイズラブ」の両方の意味がある「BL」

原作漫画で銘打たれているジャンルは「BL(ブラッディラブコメ)」。物語の大筋は、「銭湯に住み込みで働く450歳の美青年バンパイアが、銭湯の一人息子である15歳の少年の“18歳童貞の血”を吸うことを目的に、彼の成長と純潔を見守る」というもの。バンパイアという、本来であれば恐怖の対象が、とっても卑近な存在となるというギャップが、まずは面白いのです。
バババ
(C)2025「ババンババンバンバンパイア」製作委員会 (C)奥嶋ひろまさ(秋田書店)2022
しかも、その関係性は親友というだけではなく、かといって“血を吸う食料”というだけでもない、確かな愛情をも感じられる、BLの本来の意味である「ボーイズラブ」の要素もしっかり感じられます。また、個性豊かなキャラクターそれぞれの「勘違い」「すれ違い」の様は、「王道」のコメディーとして楽しめますし、それは時に関係性の「亀裂」のドラマにもつながっており、絶妙なバランスになっています。
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(C)2025「ババンババンバンバンパイア」製作委員会 (C)奥嶋ひろまさ(秋田書店)2022
なお、主人公の森蘭丸は織田信長の小姓として有名な実在の人物であり、劇中では彼が本能寺の変で亡くならず、バンパイアとなり現代でも生き続けているという、なかなかぶっ飛んだ設定になっています。誰もが知る日本の歴史上の人物を「そんな大胆な解釈をしちゃうんだ!」と、思わず驚いてしまうような描き方も含めて、楽しめる作品になっています。

魅力2:特に「キレ芸」が滑り知らずな吉沢亮が最高!

そして、数々のコメディー要素の中でも、特に笑いをかっさらっていくのが、吉沢亮の演技力。18歳童貞の血を狙う意志が過剰に表れる様や、空回りしまくる様が、その美青年ぶりとのギャップも相まって、面白くって仕方がありません。「本人はいたってマジメだけど傍から見れば滑稽」という、コメディーの王道をやり切っていると言っていいでしょう。
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(C)2025「ババンババンバンバンパイア」製作委員会 (C)奥嶋ひろまさ(秋田書店)2022
しかも、吉沢亮がときおり繰り出すのが、15歳のピュアボーイのあまりのかわいさに、思わず裏返った声で「ズキュン!」「かわいい!」と叫ぶという演技。あまりにストレートすぎて「安直な笑い」と言いたくなるのですが、これまで数々のシリアスな役柄をこなしてきた吉沢亮だからこそ成立する絶妙なおかしみがあって、全肯定するしかありません。

さらに滑り知らずなのが「キレ芸」。それまでのマジメな口調かつ良い声からの「きさまぁ〜!」には、若干の狂気が混じっていることもあり、どうしても笑ってしまうことでしょう。
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脇を固めるキャスティングも完璧
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