
筆者も日本各地を出張に行くことが多いが、特に京都などでは日本人の生活に支障が出るほど観光客でごった返しているのを目の当たりにしている。仕事で大阪にもよく行くが、新幹線のホームでは数多くの外国人観光客が大きな荷物を抱えて右往左往している姿をよく目にする。
「外国人街」と化したニセコ
日本でもオーバーツーリズムが問題になっている観光地は北海道の人気リゾートであるニセコ町(以下、ニセコ)だろう。ニセコは外国人観光客の急増によって「外国人街」と化しているという。その様子を取り上げたある記事では、食料品などの物価が高騰し、ウニが1折3万円で売られ、急速冷凍したタラバガニのボイルも3万円近い値段になっているとの報道があった。地元住民には信じられないような価格だが、それでも飛ぶように売れているという。このような状況では、住民の生活にも悪影響を与え、安心して暮らせなくなっていく可能性がある。物価高騰で特に地元の労働者や年金暮らしの高齢者なども居場所がなくなる懸念もある。

日帰り観光客に「入島税」を導入したヴェネツィア

まず、観光客に対する入島税である。ヴェネツィアでは2024年から、日帰り旅行者を対象に、一定の日時に限定して入島税を導入している。宿泊しない訪問者が立ち寄るだけでは街に恩恵は少ないため、街の景観維持の資金を確保するために、カネをしっかりと取れるようにする。それによって、インフラへの投資も可能になる。
さらに長期滞在を奨励することで、地元文化への理解を深める観光を促進できる。地元ビジネスを支援し、大量生産の土産物店を減らす取り組みも可能だ。
またピーク時には、事前予約を義務付ける試験的なシステムを導入した。それによって人の流れを管理し、混雑を緩和できるようにしている。またスマートセンサーとカメラで観光客の動きを追跡し、混雑エリアの調整やルート変更に活用しているという。デジタル化やAIなどの導入で、ピークの予測などもかなり正確にできるようになっているそうだ。日本でも訪問者の「交通整理」に乗り出すべきかもしれない。