罰則化によって、観光客に“ナメられない”対策を取る必要性
加えて、日本でも奈良公園の鹿にケリを入れる観光客の動画などが一時話題になったが、こうした行為は地元住民が観光客に不快感を持つ原因になる。ヴェネツィアでは、マナーを守らせる取り組みを行っている。例えば、歴史的建造物に座る、禁止されている鳩への餌やりなどに罰金を課すルールを厳格化した。日本の場合は、ゴミの放置や路上飲酒(外国では禁じられている国も少なくない)、喫煙など、ルールを守らない観光客には毅然(きぜん)と罰金を課すべきだろう。
さらにヴェネツィアでは公共意識を高めるキャンペーンも行っており、標識やデジタル掲示板で、観光客に街と住民への敬意を呼び掛ける啓発活動を展開している。これは日本もやるべきだ。
日本では英語ができない警察官も多いので、音声の翻訳機を持たせて毅然と対応させるようにしたほうがいい。フレンドリーなのはいいことだが、ナメられるのはいけない。最近も北海道に現れた外国人の迷惑系YouTuberに警官がフレンドリーに接していたことで話題になっていたが、警官が迷惑行為をする人に対してもフレンドリーな態度に終始するようだと地元住民は不安に感じるだろう。
新規ホテル建設を禁止にしたバルセロナ

例えば、短期賃貸の規制で、Airbnb(エアビーアンドビー)など短期賃貸を厳しく制限している。さらに無許可物件に高額な罰金を課し、数千件を閉鎖。これにより住宅価格の高騰を抑え、地元住民の住環境を守っている。
また観光税を引き上げている。ホテルや短期賃貸の税金をきちんと取り、それを公共施設の維持やインフラ改善に活用している。日本は現在、日本から出国する観光客を対象に「国際観光旅客税(出国税)」として1回につき1000円を徴収しているが、入国税も導入して観光地に還元する制度があってもいい。
バルセロナの場合、人気スポットの混雑緩和のために、例えばサグラダ・ファミリアの入場を事前予約制にして、入場者数を制限している。またホテル開発の制限も行い、バルセロナ市の中心部では新規ホテル建設を禁止にした。代わりに、密集エリア外に誘導するように試みている。
迷惑行為への規制もバルセロナのやり方は参考になるかもしれない。バルセロナでは、公共の場での飲酒は禁止で、夜間での騒音にも罰金が課せられている。ヴェネツィア同様、意識向上キャンペーンを行っており、観光客には「責任ある観光」を求め、文化や住民への敬意を呼び掛けているのだ。
こうした取り組みを日本も国が主導しながら、自治体と一緒に行っていく必要がある。京都でもよく耳にしたが、マナーのない外国人が少なくなく、外国人全体への嫌悪感が強まっている印象がある。これは健全なこととは言えない。きちんとコントロールしながら日本の文化を楽しんでもらい、きれい事ではなく、きちんとカネを落としてもらう。そうしないと、日本中にニセコのような景色が広がってしまう可能性がある。
この記事の筆者:山田 敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。
X(旧Twitter): @yamadajour、公式YouTube「スパイチャンネル」
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。
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