世界を知れば日本が見える 第61回

フジ上層部、最初の会見後は「ヘラヘラしていた」と社内の声。中居正広とワインスタイン事件の酷似

中居正広氏が「芸能関係」の女性とトラブルを起こし、巨額の示談金を払っていた事件にフジテレビ社員が関わっていた問題で、フジテレビは窮地に立たされている。筆者が12月初旬から把握していた内容、アメリカの「#MeToo運動」の発端となった事件との類似点を挙げた。

フジテレビ
フジテレビ本社ビル(画像出典:Tanasut Chindasuthi / Shutterstock.com)
フジテレビが前代未聞の危機的状態にある。

1月27日、フジテレビは2度目となる記者会見を開いた。そこでは嘉納修治会長と港浩一社長が「責任は経営者にある」として同日付で退任を発表した。

フジテレビ、CM差し止め75社

事の発端は、2024年12月19日発売の『女性セブン』(小学館)が「中居正広 巨額解決金 乗り越えた女性深刻トラブル」という記事を掲載したことだった。内容は、国民的タレントだった中居正広氏が「芸能関係」の女性とトラブルを起こし、巨額の示談金を払っていたというもの。さらにそこにはフジテレビの編成幹部(元プロデューサー)も絡んでいたと報じられた。

するとこの問題はみるみる大きくなり、関与したとされるフジテレビに対して、スポンサー企業が分かっているだけで75社もCM放送を差し止める事態になっている。さらにフジテレビが2度にわたって記者会見するところまで状況は悪化した。

実はこの件については、筆者は12月の早い時期に情報をつかんでいた。そこで今回は筆者が見てきたこの1カ月以上の騒動の裏側をできる範囲でお伝えしたいと思う。外国で起きた同様の事件についての視点も少し絡めて、このニュースを考察してみたい。

「女性が警察に訴えることも考えたが、フジテレビ側がそれを止めた」

筆者が最初に話を聞いたのは、中居氏とフジテレビに近い関係者からであった。その段階では、既に週刊誌2誌が情報をつかんで取材を始めていることも耳にしていた。

その時点で、顛末(てんまつ)を詳しく知る立場の関係者が筆者にこう話している。「中居正広氏がフジテレビの元女性アナウンサーXさんに、意に沿わない性的行為を行ったことで9000万円の示談をしていた。問題は、その出来事が起きた2023年6月以降、女性が警察に訴えることも考えたが、フジテレビ側がそれを止めたこと。その後、Xさんは体調を崩し、結局フジテレビも退職した」

普段は芸能関係の取材をしない筆者も、仮にこの話のように、会社が性被害を訴える社員の「口封じ」と解釈できるような行動を取っていたとしたら看過できない。しかも国から放送免許を付され、報道機関でもあるフジテレビが組織としてそんなことをしていたとすれば糾弾されるのは避けられないと思い、さらに情報収集を続けた。

ワインスタイン事件と酷似した内容

この件からすぐに思い出したのは、2017年にアメリカのハリウッドで起きた事件だった。著名な映画プロデューサーだったハーヴェイ・ワインスタイン氏(受刑者)が、女性俳優やスタッフらに、プロデューサーという優位的な立場を使って性的暴行やハラスメントなどを繰り返し、大問題に。被害者の女性たちが次々と経験を告発し、「#MeToo」運動に発展している。

ワインスタイン氏はアメリカ・ロサンゼルスの裁判所で、性的暴行などの罪状から禁錮16年の判決を受けており、さらにほかの裁判も進行中である。

中居氏の件は、フジテレビの元プロデューサーが関与して、立場の弱い女性に性的な行為を行ったという話であり、ワインスタイン受刑者の行為を想起させるものだった。事実、示談の原因が意に沿わない性的行為であれば、刑事事件に発展してもおかしくない。そうなれば、被害者のXさんが警察に訴えることを止めた人たちも共犯関係になりかねない。

事の重大さは承知していたが、既に週刊誌2誌が記事にすべく動いているのもキャッチしていたので筆者は自ら記事にするのは控えていた。というのも、そもそも芸能スキャンダルは「守備範囲」ではなかったし、1誌はフジテレビの幹部に直撃取材を始めているのも把握していたために横槍を入れたくなかったというのもある。

加えて、これはその後に報道を行う『女性セブン』と『週刊文春』(文藝春秋)の関係者も記事にする際に気を付けていたことだというが、性的事件の被害者がいることを考え、報じ方を間違えると「セカンドレイプ」のような状況になりかねなかった。週刊誌側もどう報じるのかに頭を悩ませ、非常に慎重になっていたのも聞いていたので、先に情報を公開するのがはばかられた。

そのため、筆者はひと通り情報収集を済ました後で、得た情報については詳細は書かずに12月13日にXで匂わせるような投稿を行った。「こ、これは、近く日本の芸能界でとんでもない騒ぎが起きるな……」と。
次ページ
フジテレビの上層部は「ヘラヘラしている」
Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

連載バックナンバー

Pick up

注目の連載

  • 恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」

    知って得する! 青春18きっぷより安い「北海道&東日本パス」の賢い使い方

  • 世界を知れば日本が見える

    「多様性廃止」に向かうメタ、マクドナルドら大手企業。トランプ「性別は男と女だけ」がもたらす閉鎖性

  • ヒナタカの雑食系映画論

    映画『ショウタイムセブン』の阿部寛が「岸辺露伴」に見えた理由。フジ問題と無縁ではない問題提起も

  • AIに負けない子の育て方

    【中学受験2025】安全校が危ない? 親が知っておきたい最新受験事情と、直前期の心を強くする言葉